現場の保育士に「事故への想像力」が欠けていれば、事故は起こるべくして起こる

現場の保育士に「事故への想像力」が欠けていれば、事故は起こるべくして起こる

連載「本音で語る、保育園のほんとの話」(第5回)
(保育園の危機対応アドバイザー・脇貴志)

保育園の安全レベル」を決める一番重要な要素は「園長先生」ですが、それだけではありません。そのほかの重要な要素として、現場で働いている保育士がいます。今回は、現場の保育士が保育園の安全レベルに及ぼす影響について、最近見たある事例を交えながらお話しいたします。

現場の保育士の方が、刑法違反になる可能性が高い

これまで、たびたび園長先生が保育園の安全レベルに及ぼす影響についてお話してまいりました。でも、それだけではないのです。現場で働いている保育士や、保育現場を管理監督する行政の影響も多いいのです。今回は、保育士に焦点を当ててみましょう。
実は、保育現場には、刑法違反に問われる行為もあります。刑法違反とは、大きく分けて2つあります。1つは、われわれの身近にも存在する犯罪行為です。つまり、やってはいけないことをやってしまうことです。人のものを盗んだり、だましたり、傷つけてしまうことなどです。保育現場では、保育士が園児に対して行う虐待行為などは、こちらに所属する違法行為です。

 もう1つは、やらなければならないことをやらなかった場合に問われる罪です。保育現場で働く保育士などが園児の安全に配慮しなければならないことなどは、こちらに所属しており、それができない場合、それ相応の責任が問われます。これまで保育現場で起きた事故でもっともこの責任が問われたものが「プールの監視エラー」です。

 プールで発生した事故で刑事責任が問われ、有罪判決を受けた保育士や幼稚園教諭は複数います。一方で、園長で起訴され裁判で責任を問われた人はいますが、有罪判決を受けた人はいません。

つまり、事故現場の近くにいる保育士の方が事故防止をできる立場にいるので、万が一の事故発生時には責任も重くなるということなのです。保育士が安全レベルに与える影響は非常に大きいのです。

それだけ重い責任が課せられてしまう保育士に専門教育を施すことなく保育士資格(国家資格)を与えているという制度上のエラーが保育現場の事故を生み、保育現場から働く意思をなくし、有資格者でありながら保育以外の仕事を選択する人たちを生み出す、という悪循環が生まれています。

保育士が本来、果たさなければならない役割と現状

先日、会社で神田明神に初詣に行きました。そこで、おそらく近くにある保育園から園児さんたちも境内にお散歩に来ていました。われわれが初詣に行ったのは、1月7日以降だったのですが、境内はまだ会社員の方々があふれていて、閑散とした雰囲気の神社ではありませんでした。
中にはほろ酔いの会社員もいました。そのような環境の神社に園児を散歩に連れてくるのは、通常の神社に連れて行くのとはわけが違うのですが、そこにわざわざ園児を連れてきている保育園がありました。

状況を説明しますと、10名ほどの3歳児を3名の保育士が引率していました。環境はさきほどご説明した通りのほろ酔いのサラリーマンが混じる雑踏の中です。
そのような状況の中、3名の中の1名の保育士が左手では園児の手を引き、右手はパーカーのポケットに入れたままで引率していました。それを見て、私は失望したと同時に、この園ではすでに園児が傷つく準備ができていると思いました。

事故は人が発生させる

事故は人が起こします。保育現場での事故は保育士が引き起こします。先ほどの事例のように保育士が園児に接しているということは、園の内外で事故を発生させる準備ができているということなのです。

このような状況を招くのは、なぜなのでしょうか。その原因は人間の想像力の欠如にあります。いつもと違う環境の神社に園児を散歩に連れて行くという行為は、通常の散歩よりもリスクが高くなる行為です。
このようなときには、いつもよりも慎重な準備が必要です。しかし、その準備もせず、想定もせず、片手をポケットに突っ込んだままで、園児を引率していたのは、保育士の想像力の欠如なのです。

この想像力の欠如は、先ほどご説明したように園児の引率で失敗した経験がないからです。でも、失敗しなければ保育現場の事故・危険に関する想像力が身につかないのであれば、保育士が一人前になるためには園児が傷だらけにならなければなりません。

「人の気持ちを理解できる保育士」が理想

人の想像力とは、日常生活でも身につくものです。これを一番計ることができるのが、「人の気持ちに対する想像力」があるかどうかです。
保育施設を利用する保護者の気持ちが想像できる保育士は、人の気持ちに対する想像力も備えているものです。

みなさんの気持ちを理解している保育士がいる保育園は事故やトラブルも少ないはずです。そのような観点から保育士を見てみてはいかがでしょうか。