最近増加している「送迎保育ステーション」の実態は? メリット、デメリットを紹介!

最近増加している「送迎保育ステーション」の実態は? メリット、デメリットを紹介!

保育園 送迎保育ステーション 

働きたいママにとって深刻な待機児童の問題。「空いている保育園なんてどこにもないのでは?」と考えてしまいますが、郊外や交通の便が良くない地域に、意外と空きがあることも。そのような場所への通園を可能にするのが「送迎保育ステーション」なのです。(ライター・松原夏穂)

「送迎保育ステーション」とは

2001年に閣議決定した「仕事と子育て両立支援策の方針」の、待機児童ゼロ作戦の取り組みの一つに設けられた「送迎保育ステーション」。駅前などの利便性の高い場所に、この施設が設置されます。
仕組みは以下の通りです。

1、朝、保護者が自宅から送迎保育ステーションまで園児を連れて行く。
2、園児たちは専用のバスで、それぞれが通園する保育施設へ送り届けられる。
3、保育時間終了後、園児たちは専用バスで送迎保育ステーションに戻り、保護者が迎えに来るまでをすごす。
4、保護者が迎えに来て引き取り、帰宅。

※参考:「仕事と子育ての両立支援策の方針について(平成13年7月6日閣議決定)Ⅱ.待機児童ゼロ作戦―最小コストで最良・最大のサービスを」

園児の送迎と保育を行うのが、送迎保育ステーションの役割です。住宅地近隣や交通の便の良い場所にある保育施設は、利用希望者が殺到しがち。対して郊外や交通の便の良くない場所の保育施設は、空きがあることも多いです。しかし通園が難しいと、入所に二の足を踏みがち。そこで、保育施設の需要と供給のバランスを整え、待機児童の解消につなげるのが、この制度です。

送迎保育ステーションを駅前などにすることで、共働きの保護者が自身の通勤時間に合わせて子どもを送迎することが、可能になります。また、日中は未就学児の一時預かりも実施し、子育て支援にも一役買っています。

運営するのは、市区町村です。国が運営費の3分の1と施設整備費の一部を補助し、市区町村の負担を軽減します。

東京都町田市でもスタート

送迎保育ステーションの概要が分かったところで、利用方法について、2017年10月からこの事業を始めた、東京都町田市を例にとって説明します。

町田市は2017年4月1日の時点で、待機児童数が229人いました。これは、全国市区町村別の待機児童数の発表でも27番目と、多い方でした。そこで、待機児童対策としてスタートしました。待機児童数の発表から、事業の開始までが半年。迅速な対応でした。これまでも東京都内では江東区・世田谷区で、送迎保育は実施されていました。これらは、私立保育園の本園と分園を結ぶもので、自治体主体で地域内の保育園と連携したのは、町田市が都内で初めての例です。

町田市の送迎保育ステーションの概要

対象年齢:送迎対象施設に入所する1~5歳児クラスの園児(2、3号認定子ども)
定員:30名
利用料金:月額2,000円 延長保育150円/30分 月額上限6,000円
利用日時:平日、土曜日7~9時、16~18時、延長18~20時
送迎先:町田市内12か所の保育施設
申請:利用申込書を町田市へ提出→利用の可否が決定

一日の流れ

7:00 送迎保育ステーションで預かり
8:00 送迎
9:00 在籍園で過ごす*
16:00 送迎
17:00 送迎保育ステーションで預かり
18:00 延長保育
20:00 お迎え
*日中は、未就園児の一時預かりを実施
※参考:町田市送迎保育ステーション

0歳児が利用できないのは残念ですが、安全面を考えると致し方ありません。定員30名とあるので、キャンセル待ちとなることもあるようです。月額2,000円で延長保育した場合は追加料金(150円/30分)がかかりますが、上限が6,000円なので、金銭面の負担は大きくありません。

提携保育施設が12カ所あり、中には認定こども園や幼稚園もあるので、認可保育園に入園できなくても仕事を続ける選択肢は増えそうです。

東京都町田市の、送迎保育ステーションの効果

前述のように、2017年4月1日時点の待機児童数は229人。1年後の2018年4月1日時点では、151人と78人減少しました。数字だけでは計れませんが、ある程度の効果があったといえます。

町田市の広報によると、当初の定員20名から、2018年1月には18名の利用になり、定員オーバーとなりそうになったことから、2018年4月からの定員を見直しました。定員を30名にし、それに伴いバスを1台から2台へ、運行便数も3便から4便へ変更しました。2017年10月に7人の利用から始まり、半年経たずに2倍以上に増えました。

利用者アンケートを取ったところ、17名の保護者の内12名から回答が得られ、更に11名が「満足」と答えています。具体的な声を紹介しましょう。

・ステーションを利用し、在籍園と異なる友だちが増える。
駅前では難しい自然豊かな地区まで送迎をしてくれるので、のびのびと保育してもらえる。
・自宅から遠くても、通園が可能になる園の選択肢が増え、子どもの特性を考えて園を選ぶことができる。
・子どもには、伸び伸びと育ってほしく、自身で送迎をしてでも郊外の園庭の広い施設に預けたいと思っていましたが、そのためには、勤務時間を短縮する必要がありました。ステーションを利用したことにより、フルタイムで働きながら希望する園に通わせることができてありがたく思っている。

ちなみに、年齢別利用者数を見ると、1歳児9名、2歳児3名、3歳児2名、4歳児4名と、1歳児が半分を占めています。低年齢の子どもを持つ保護者にとって、有効な制度といえます。

※参考:町田市プレスリリース2018年2月9日付「送迎保育ステーションの利用定員を拡大します」

送迎保育ステーションのメリットは?

送迎保育ステーションには、以下のメリットが挙げられます。

保育施設の選択肢が広がる。

「自宅から遠いから」、と入所も諦めていた施設も通うことが可能になります。

ママの働く可能性が広がる

定型保育施設の中に、幼稚園や認定こども園もあるので、幼稚園ママも働く可能性が広がる(但し、「2号認定=保育を必要とする」が必要)

送迎保育ステーションのデメリットは?

デメリットとして、考えられることは以下があげられます。

バスに子どもを乗せるのが心配

町田市以外でも基本、0歳児は乗せず、1歳児にはチャイルドシートの使用を義務付けています。また、市内どこの園でも送迎可能ではなく、子どもの負担にならない距離にある保育園(片道30分程度)に考慮しています。
バスには運転手と保育士が同乗しているので、子どもから目が離れることもありません。

保育園とのコミュニケーションが取りにくい?

町田市は、月数回は在籍園に訪問に行くこと、園行事・懇談会・個人面談には積極的に参加するようにお願いしています。

拡大する、送迎保育ステーション

現在、首都圏でも送迎保育ステーションは広まりつつあります。1都3県では以下のような自治体が取り組んでいます。

・東京都町田市、江東区・世田谷区
・神奈川県横浜市
・千葉県流山市・松戸市
・埼玉県三郷市・草加市など

さらに、厚生労働省によると、現在送迎保育ステーションに一括して子どもを送迎している状態から、直接子どもの自宅もしくは自宅近くで安全に待機できる場所まで送迎することも検討しているようです。

※参考「保育課関係-厚生労働省 2018年4月1日 多様な保育ニーズに対応した市区町村の取組に対する支援について」広域的保育園等利用事業p16、P56(資料13)
 
待機児童対策として、さらなる発展が期待されそうな取り組みです。お住いの自治体で取り組みがあれば、検討してみてもいいですね。