保育士は転職する方が多いといいますが、どんな転職体験をしているのでしょうか。今回お話を伺ったのは、麻美さん(2020年現在38歳)。短大の保育学科を卒業後、保育士に。3人の男児を育てながら働き続けるも、現場以外で保育に関わりたいと退職。子育て支援に力を入れるべく、現在準備中です。保育士資格と幼稚園教諭二種免許状をお持ちです。(ライター・松原夏穂)
幼稚園の頃の先生に憧れて、保育の道へ
「幼稚園児の頃、大好きだった先生がいました。私も将来こんな先生になりたいなと思って」楽しそうに思い出を語る麻美さん。進学先は迷わず短期大学の保育学科を選びました。
自主実習(※)で行った私立認可保育園が一目で気に入り「ここで働きたい! 」と強く思うように。念願がかない、卒業後にその園に就職しました。
※自主実習 学校の紹介ではなく、自分で実習先を探すこと(必修ではない)。
充実した5年間の保育士生活
保育園は自然豊かな場所にあり、3歳、4歳、5歳は異年齢保育を行っていました。0歳児1年間、1歳児1年間、異年齢児を2年間、1歳児を1年間と全学年を担当しました。
子ども達は毎日外で元気に遊んでいて、振り返ると素晴らしい環境でした。職員同士の人間関係にも恵まれて、今でも仲良くしている方も。
「第一印象って、大切かもしれませんね」としみじみ。
保育士として充実した日々を送っていましたが、結婚・出産と私生活でも転機が訪れます。仕事を続けるか悩みましたが、子育てに専念すべく退職しました。
母親になって再就職、あえて保育とは距離を置いて
長男が1歳半のころ仕事を再開。でも、「わが子を見ないで他人の子ども見ること」に抵抗を感じ、保育士は選びませんでした。商業高校出身ということで、事務職に就きました。この間次男の出産もあり、目まぐるしい日々を過ごしました。
「仕事が終わって、子ども達を保育園に迎えに行き、その後は夕食、お風呂、と戦争のようでした。夫は夜勤がある仕事で、一人でやることが多くイライラする日もありました」
筆者にも経験ありますが、本当大変です。特に子どもが小さいときは。「でもね」と話しを続ける麻美さん。
「土日の休みに子ども達と散歩したり、どこも行かないけど家でゆっくり過ごしたりしたことは、 楽しい思い出です。子ども達は、お出かけしたかったかもしれないけど……」
思わぬことから、再び保育の道へ
事務職で働いて約5年後、転機が訪れます。何と、勤め先が倒産。どうしようかと悩んでいたところ、当時子どもを預けていた認定こども園から「働いてみませんか」と声を掛けられました。当時、長男は小学1年生、次男が年中。思いもよらぬ展開から、再び保育の道へ進むことになりました。
パート保育士で「補助」として入りましたが1年目からクラスをパート保育士2人で任されることに。仕事は正規職員と同じで大変でしたが、やりがいもありました。「子ども達が楽しめることを」と、いろいろな活動に取り組みました。子ども達がお散歩で見つけたドングリや小枝で作品作りをするなど、子どもの成長や育ちにつながる保育を意識していました。また、障害児の担当をしたことも。
長男と次男が小学生になった頃、三男を妊娠。出産直前まで働きました。復職については悩んだものの、勤めている園に三男を預け産後10か月で復帰しました。
子ども達と触れ合う日々は楽しいものでした。しかし段々、保育園側と保育の考え方がずれていくことを感じました。加えて若い保育士が次々辞めていくのを見るうちに、勤務先に違和感を覚えるように。
実はこども園で勤務した頃から、子育て支援をしたいと考えていた麻美さん。
「なかなか行動に移せなかったのですが、周囲のサポートや協力もあり昨年(2019年)から少しずつ動き始めました。情報収集のために、いろいろな園を訪問しました」
こうして子育て支援に力を注ぐため、2020年3月、約6年働いた認定こども園を退職。それに合わせて、三男も転園しました。
これからは、子育て支援で保育を支えたい
子育て支援団体の名前は、「MagMura∞(まぐむら)」。
「親子で楽しめるイベントや、ママが息抜きできるための保育もやっていきたいです。自然との関わりも大切にして、そこから多くを学んで感じて欲しいです」と話しています。
また、保育園や幼稚園の壁面装飾や発表会の小物などの製作も、手掛ける予定。そこには、「保育園や幼稚園でなくてもできる仕事を委託してもらい、保育士や幼稚園教諭の負担を軽減したいです。現場で子ども達と一緒も楽しいですが、影から支える仕事も大切だと思います」という、現場を経験したからこその思いが込められています。
転職を考えている方へのメッセージ
麻美さんは最後に、生き生きとこう語ってくれました。
「新しいことを始めるのは、とても勇気がいることです。でも、本当にやりたいことは楽しいので、苦にはなりません。どんな仕事でもそうですが、特に子ども達と関わる仕事は、大人が楽しいと感じることが大切だと思います。いつも前向きに楽しんでいきたいです。わが子を見て感じたのは、関わる保育士でその1年が大きく変わることです。保育士の仕事を誇りに思うと同時に、身の引き締る思いでした。人生は一度きり! 仕事も含めて、楽しく過ごさないともったいないですよ」
「幼児と関わる仕事」イコール「保育士や幼稚園教諭」だけではないのだなと改めて気づきました。「影から支える仕事も大切」という言葉が印象的でした。
筆者としては、「園での備品作りのサポート」はすごく良いアイデアだと思います。麻美さんが活躍する日が楽しみですね。
2020年4月からの本格的な活動を目指すも、新型コロナウイルス感染の影響で、活動は大幅に縮小。しかし「今できることを」と、荒れ地を切り開き、倉庫を片付け、近くの山をきれいにするなど、活動の場を作成中。親と子どもが自然で遊べる空間作りを目指しています。
(マメ知識)保育士転職サイトは複数登録しよう!
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