子どもたちの給食の食べ方は様々です。お家でのいつもの食べ方にする子、自分なりにこうした方がおいしいかなと考える子、遊び食べになってしまう子など、色々です。その中でも、会議で話題になったのが、「目の前で、ご飯にお味噌汁をかけようとしている子」。皆さんだったらどう考えますか? 今回も、はぁもにぃ保育園の事例をもとに、食べることの原点について考えていきたいと思います。(はぁもにぃ保育園 園長 山下真由美)
ある日の給食会議にて
A先生
B先生
A先生
でも私は抵抗あるんです。
マナーとしても良くないって思うんですよね
C先生
A先生
私は、そういのはお行儀が悪いと習いました
給食の先生
むしろ皿が洗いやすくなるし(笑)
嫌な気持ちはしないよ
C先生
A先生
最初から、中華丼の時は最初からのっているし…
C先生
給食の先生
だから食べ方も、子どもが混ぜたり、かけたりした方がおいしく食べられるっていうなら、いいんじゃないかなぁ
C先生
B先生
給食の先生
C先生
D先生
子どもたちは色々実験してみたいんじゃないかな…
一同、Sちゃんなら、ご飯とバナナを混ぜそう!!とイメージして最後はみんな笑顔で話し合いは終わったのでした。
そもそも「三角食べ」ってさせたほうがいいの?
うちの園では、職員間の話し合いの結果、「給食はおいしく、たのしく」をモットーにしています。ご飯にお味噌汁をかけることは、あえて先生の方から推奨はしないけれど、子どもがやってみたい、そのほうが食べられるということであれば、お味噌汁以外のものも、かけたり、混ぜたりして食べてもいいという結論に至りました。
なので、結果的に、三角食べを強く指導するということは、行っていません。子どもの食べたいという意欲を尊重し、食べ方も子どもたちに任せていく、ということにまとまりました。
三角食べの起源を調べていくと1970年代から一部地域の学校で推奨され、「『完食させたい』という教育現場、大人サイドの願いから指導されたもの」と言われています。確かに、並行して食べ進むため、残しても比較的栄養バランスがとれることや、硬さが異なるものを混ぜて食べるとかむ回数が増え、肥満防止になるというメリットがあります。
文部科学省が2007年に発行した「食に関する指導の手引」には、「主食とおかずは交互に食べる」の記載がみられます。なので「三角食べ」を指導している園や学校は、マナーとして指導していることが多く、一品を順に完食していく「ばっかり食べ」は良くないと伝えているところもあるようです。
ちなみに2019年の第二次改訂版では、「主食とおかずは交互に食べる」の記載はなくなっています。
しかしながら、懐石料理やコース料理のように、一品、一品食べてから、次の料理が出てくることもありますよね。子どもにとっては、コース料理は良くて、給食の一品ずつ食べるのはいけないと指導されたら、混乱してしまうかもしれません。
大事なことは、子どもの成長に必要な栄養をとれていれば、食べ方にはこだわらないことです。ご飯と一緒に食べておいしい献立もあれば、単品で味わうものもあるので、料理に合った食べ方を、先生が見本として子どもに見せていくということではないでしょうか。
先生が見本を見せたい食事のマナー
子どもたちは、大人のしぐさや言葉などを、本当によく観察しているものです。そして真似してほしくないことでも真似します。なので、子どもたちの食事の仕方を細かく指導したり、注意することよりも、一番大事なことは、一緒に食べる先生自身がマナーを実践することです。
特に気を付けたいこと
- 肘をついて食べる
- 口に食べ物を入ったままおしゃべりする
- くちゃくちゃと音を出して食べる
- ズルズルと汁をすする
- 噛まずに急いで食べる
- 食事中に食べることが気持ち悪くなるような会話をする
- 食べている時に途中で立ち歩く
- 食べ物を粗末にするような食べ方をする
他にも、日本には箸のマナーなども含めると沢山のマナーがあります。これらはすべて、食べている人同士が気持ちよく、おいしく食べられるためのルールであり、丁寧に食事をするということは、食べ物や作ってくれた人への感謝の気持ちを込めるということにもなります。
もし、子どもたちに食育の時間などで、伝える場合には、なぜこのマナーが必要なのか、大事なのかを、イラストなど視覚的にわかりやすくすることも大事です。しかしながらやはり、保育者や近くで食事をする大人が手本を見せることが、一番子どもたちには教育になるのです。
【山下真由美】 板橋区認可保育園・はぁもにぃ保育園園長 / 保育コミュニケーション協会 認定ファシリテーション講師 保育士の為の新人教育、メンタルケア、チームビルディング研修など講師としても活躍中 (イラスト はぁもにぃ保育園・栗林実花)
<編集協力・松原夏穂>