「幼稚園教諭から、保育士資格取得特例で保育士に」保育士の転職体験

「幼稚園教諭から、保育士資格取得特例で保育士に」保育士の転職体験

保育士は転職する方が多いといますが、どんな転職体験をしているのでしょうか。今回お話を伺ったのは、桃子さん(仮名)。短大の初等教育学科を卒業後、幼稚園教諭に。結婚出産で退職した後、保育補助として保育園に勤務。さらに2019年に「保育士資格取得特例」を受けて、2020年4月より正規職員として保育園で働いています。(ライター・松原夏穂)

得意の音楽を活かせる幼稚園に勤務

子どもの頃から、幼稚園の先生に憧れていた桃子さん。進学先は短期大学の初等教育学科を選びました。一方、ピアノとアルトサックスを長年習うなど、音楽も大好き。短大卒業時に幼稚園教諭二種免許状と小学校教諭二種免許状を、通信教育で保育士資格を取得されました。就職先には、音楽教育に力を入れている私立幼稚園を選びました。

音楽を通じて子ども達と接するのは、楽しい日々でした。しかし結婚後、遠方に転居することもあり、8年勤めて退職しました。

「保育補助」として保育園で勤務

結婚後2人の男児を出産し、5年程専業主婦をしていました。その後パートに出るも、「わが子が小さいうちは、他人の子どもよりわが子をしっかり見たい」との思いから、保育以外の職種を選びました。

次男が小学校中学年の頃、「保育士の仕事を再開しても良いかな」と思うように。近所に私立保育園があったので、面接を受けました。この時点で、桃子さんは「保育士資格」を持っていません。しかし「幼稚園教諭二種免許状」があり、豊富な現場経験があったことで「保育補助」としてパートで採用されました。

久しぶりの現場、それも初めての「保育園」。戸惑いはなかったかの質問に、「かつて勤めていた幼稚園はカリキュラムが詰まっていました。対して、その保育園は毎日お散歩してたまに制作という感じで『違うな』と思いました。でも、お子さんのお世話をすることに、変わりはないので、特に戸惑うことはありませんでした」とキッパリ。

身に付けた経験は簡単に衰えないものだと、筆者は思いました。

この保育園を始め、3つの保育園で「保育補助」を担当。パートのため自身の子ども優先で勤務できました。子ども達も幼児ではないので、大きな苦労はありませんでしたが、「子ども達が体調を崩したときは休みをもらっていました」

そんなとき、転機が訪れます。

「保育士資格取得特例」で保育士資格を取得

保育補助を続けるうちに、周囲から「保育士資格を取ったら?」と何度か勧められました。実際、資格はなくても仕事内容は同じで、それで時給が上がれば嬉しいな、と考えました。

2012(平成24)年度から、厚生労働省が幼稚園教諭免許状保有者を対象に、保育士資格取得特例(※)を始めたこともあり、挑戦することに。仕事を続けながらできる、通信教育を選びました。自宅で勉強し、土日に1回スクリーニング(実習)を受けるものなので、無理なく受講し、2019年に念願の保育士資格を取得しました。

「保育士資格を取ったことで、保育園で堂々と仕事ができるようになりました。責任は重大ですけど。それまでは、どこかで『私は保育士じゃない』と思って働いていましたから」

※厚生労働省 幼稚園教諭免許状を有する者における保育士資格取得特例 当初平成31年度末までだったが、令和6年度末まで延長。幼稚園教諭免許状取得、幼稚園等で「3年以上かつ4320時間以上」実務経験がある者が対象。特例教科目8単位を受講した後、保育士試験に合格して資格を取得できる。

※文部科学省では、保育士向けに、「幼稚園教諭の普通免許状に係る所要資格の期限付き特例」を設置している。保育士資格取得、保育士等として「3年以上かつ4320時間以上」実務経験がある者に対して、幼稚園教諭の普通免許状を交付。当初、平成31年度(2019年度)までだったが、令和6年度末(2024年度)まで延長。

正規職員として保育園に勤務

その後別の保育園に移り、パート保育士として勤務。そして2020年4月に正規職員になりました。

しかし、新型コロナウイルス感染の影響で、園は自粛状態になり、登園児は数名程度。出勤は当番制になり、在宅勤務の日も。教材や指導案を作成するなどして、子ども達と触れ合う日を心待ちにしています。

転職を考えている保育士へのメッセージ

「私も何度も保育園を変わり、いろいろ勉強しました。転職のきっかけは、保育のやり方が合わなかったり、人間関係が嫌になったりしたことがほとんどだと思います。自分に合う保育園と出会うのは難しいですが、どこに行っても子ども達といる時間は楽しいですよね。やりがいを見出して、無理のない程度に頑張ってください」

また、保育士資格の取得を考えている方には、こう語っていました。

「保育士はもちろん大変な仕事だと思います。時には家庭環境まで踏み込まなければならない場合もあり、胸が締め付けられる思いをすることもあります。でも、これから社会に出て行く小さな子の第一歩のお手伝いができる、素敵な仕事だと思っています。少しでも迷ったら是非勉強してほしいです!」

なお、「幼保連携型認定こども園」が徐々に増え始めていますが、配置される職員は「幼稚園教諭免許状」と「保育士資格」の両方を有する、「保育教諭」が位置づけられています。子ども達と関わる仕事を長く続けたいと思う方は、この機会に検討してはいかがでしょうか。

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