保育園のプール遊びは、2人以上の職員を配置する必要があることを知っていますか?

保育園のプール遊びは、2人以上の職員を配置する必要があることを知っていますか?

連載「本音で語る、保育園のほんとの話」(第10回)
保育園の危機対応アドバイザー・脇貴志

プール、園児、事故

夏になるとどの保育園もプール遊び・水遊びをします。しかし、このプール遊び・水遊びは、死亡事故が発生しやすいと言われています。あなたの子供を預けている保育園では、プール遊び・水遊びの際に、何人の職員が配置されているかを、ぜひ確認してみてください。

プールや水遊び時の事故は多い

保育園では、いろいろな事故が発生いたします。特に死亡事故の場合、一番多いのは園児が寝ているときの事故です。その次に多いのが、プールや川遊びに代表される水遊びです。

園児が死亡した場合、園児の命に対する損害賠償責任(民法上の責任)と業務上過失致死罪(刑法上の責任)の両方が問われる可能性があります。。

損害賠償責任は、ほぼ100%認められます

一方で、業務上過失致死罪は、一部の例外を除いて、なかなか認められることはありません。その一部の例外が、プールでの事故なのです。

職員がプールの中で遊んでいる園児から目を離し(監視作業を怠り)、園児が死亡する事故が起きた場合、監視作業にあたっていた職員は、業務上過失致死罪に問われる可能性が他の事故よりも高いという裁判結果が出ています。そのため、保育園内で死亡事故が発生した場合、プールでの死亡事故が業務上過失致死罪を問われる可能性が最も高いということなのです。

プール事故の関係者は多数、起訴されてる

では、業務上過失致死罪に問われた場合、「園長」と「職員」ではどちらの責任が重いのでしょうか? 過去の裁判をみるとわかります。

2011年7月11日に発生した神奈川県大和市のプール死亡事故では、園長と職員が起訴されており、園児の担任だった職員には業務上過失致死罪を認める有罪判決を出していますが、園長は無罪判決でした。ちなみにプールでの死亡事故で園長が起訴されるというのは珍しいことです。

この裁判で園長に裁判所は無罪判決を言い渡しているのですが、基本的に検察は負ける裁判をしません。つまり、大和市の事故では園長を有罪に追い込むだけの材料がそろったので、起訴したのだと考えられます。しかし、裁判では無罪判決が言い渡されました。要するに検察側が負けたわけです。

そういう流れの中で、このほど、注目の裁判が始まりました。さいたま地検が、さいたま市内で起きたプール死亡事故で園長を起訴したのです。

2017年8月24日、さいたま市内の認可保育園で発生した水遊びの際の死亡事故で、元園長と元保育士が先日、在宅起訴されたという報道が出ていました。おそらく、これまでの裁判所の判断からすれば、元保育士は業務上過失致死罪で有罪になる可能性が高いでしょう。この刑事裁判のポイントは、元園長が有罪になるかどうかです。

保育園で働くということは、それだけ責任が重いことなのです。

プールの監視にはルールが存在しているのです

なお、大和市のプール死亡事故は、その後のプールでの事故予防について大きな影響を及ぼすことになりました。

この事故を消費者庁の安全調査委員会が取り上げ、自己分析をして、事故予防策を提言するレポートが2014年6月20日に発表されました。このレポートは、幼稚園には文科省を、保育園には厚労省を通して全施設に通達されました。
参照:消費者庁ホームページ

そして、2016年3月31日に内閣府より公布された事故予防のガイドラインには、消費者庁レポートより引用され、全国の保育園に周知徹底されました。

そのガイドライン「プール活動・水遊びの際に注意すべきポイント」には、次のように記されています。

・監視者は監視に専念する
・監視エリア全域をくまなく監視する。
・動かない子どもや不自然な動きをしている子どもを見つける。
・規則的に目線を動かしながら監視する。
・十分な監視体制の確保ができない場合については、プール活動中止も選択肢とする。
・時間的余裕をもってプール活動を行う。

以上6項目なのですが、そのうち5項目は監視に関する項目です。この条件をクリアするためには、監視者と遊びの指導者は分けなければならず、プールの時間には最低2名の職員が必要になるということです。

プールの監視における問題は人員不足

ガイドラインに記されている項目は、意外とシンプルに書かれていると思うので、読めば実行できると考えられます。でも、保育現場にはそれが実践するのが困難という問題があります。

問題点① 現場が知らない

ガイドラインができてもそれを知っている保育園園長は意外と少ないことです。現場を見てきた私がいうのですから、これは本当のことです。

ガイドラインができた以上、ガイドラインが保育現場で実践されなければなりません。しかし、現状は保育園園長が知らないし、行政監査でもチェックされないことが大半です。それゆえにガイドラインが現場で徹底されていなくても、誰にもチェックされることがなく、事故が発生してから、「実は事故予防については何もしていませんでした」ということが多いという問題があります。

問題点② 職員が十分ではない

保育現場には、事故予防策を実施できるほど、職員が配置されていません。よく保護者の方から、職員の数が足りていないようだから、増やして欲しいという要望をいただくことがあります。しかしながら、保育園の配置基準は国によって決められており、それに応じた運営費が園に支給されています。

安全を基に配置基準を作成したら、職員も従来以上に必要となりますが、国が作った配置基準は安全を基にしたものではないので、人員的にはギリギリの職員配置となっています。したがって、ガイドラインを現場で徹底するのは意外と難しいという問題があります。

今、全国の保育園でプールが旬を迎えていることと思います。死亡事故が起きる可能性があるからプールを止めるというのも少し違うのかなと私は思います。ガイドラインにすれば、プールでの死亡事故はほとんど起こりえません。ガイドライン通りになっているかどうかは、プールの時間を見に行けばわかります。ぜひ、みなさんの目で確認してみてはいかがでしょうか。

【参考になる記事はこちら】現場の保育士に「事故への想像力」が欠けていれば、事故は起こるべくして起こる