本当に保育園の待機児童が多い自治体は?「待機児童比率ランキング」を調査(東京都)

本当に保育園の待機児童が多い自治体は?「待機児童比率ランキング」を調査(東京都)

 東京都の自治体で、本当に保育園の待機児童が多いのはどの自治体(市区町村)なのかを調べてみました。東京都の発表では、「待機児童数が多い区市町村、1位は世田谷区で861人」となっていますが、各自治体にいる子どもの数は違うため、必ずしも実態に沿った数値ではありません。そこで、待機児童比率でランキングを作成したところ、目黒区がダントツのワースト自治体であることが分かりました。

世田谷区の待機児童数がダントツで多い

 まずは東京都の発表データから、待機児童数が多い区市町村を見てみましょう。

待機児童数が多い市区町村(東京都、平成29年4月)

順位 区市町村名 待機児童数
1位

世田谷区

861人

2位

目黒区

617人

3位

大田区

572人

4位

江戸川区

420人

5位

府中市

383人

6位

中野区

375人

7位

足立区

374人

8位

中央区

324人

9位

江東区

322人

10位

調布市

312人

 世田谷区の待機児童数が861人で圧倒的に多いですね。次いで目黒区617人、大田区572人となっています。このランキングは多くのマスコミも発表しているので、見たことがある人も多いでしょう。
 ただし、このランキングは問題が2つあります。
 1)そもそも市区町村ごとに子供の数が違う
 2)市区町村によって、待機児童の定義が違う

 子どもの数が多い市区町村なら、待機児童数が大きくなるのは当然です。また、定期児童の定義が違えば、比べることはできません。ということで、上記の待機児童ランキングは、あまり当てになりません。

待機児童比率なら、規模の差は解消できる

 そこで、このサイト独自の集計方法で、「本当に待機児童が多い自治体ランキング」を作ってみました。子どもの数が多い自治体と少ない自治体の差がなくなるよう、待機児童比率(待機児童数÷保育サービス利用児童数)を計算して、ランキングにしています。

本当に待機児童が多い市区町村ランキング(東京都、平成29年4月)

順位 区市町村名

待機児童比率

(待機児童数÷保育サービス利用児童数)

すべての育休延長者を待機児童に含める
1位

目黒区

12.75%

 

2位

三鷹市

7.47%

3位

中央区

7.46%

 

4位

台東区

7.21%

 

5位

府中市

6.92%

 

6位

国立市

6.86%

 

7位

中野区

6.79%

 

8位

日野市

6.48%

9位

小金井市

6.44%

10位

調布市

6.26%

11位

渋谷区

6.04%

 

12位

狛江市

5.82%

 

13位

世田谷区

5.22%

14位

稲城市

4.63%

 

15位

武蔵野市

4.31%

16位

大田区

4.27%

17位

西東京市

3.97%

 

18位

立川市

3.73%

19位

国分寺市

3.58%

20位

江戸川区

3.56%

 

こうしてみると、ダントツで待機児童比率が高いのは目黒区です。保育サービスを利用している人数に対して、12.75%もの人が待機児童となっています。

 意外なのが、3位の中央区です。最初に紹介した「待機児童数ランキング」では8位にとどまっていますが、子供が少ない区であるため、実態により近い「待機児童比率」は、順位を上げてしまいました。

 待機児童問題というと、都心部の23区の問題と考えている人も多いでしょうが、ランキングをみると、三鷹市、府中市、国立市なども上位に入っており、待機児童比率が高くなっています。上位の市区町村に住んでいる方は早めに「保活」をスタートするのが良さそうですね。

育休中もカウントする自治体は「真面目」

 なお、この「待機児童比率」はかなり実感よりも少ない数値になっています。例えば「育休延長中の人」、「求職中の人」、「希望の保育園に入れず、仕方なく遠くの保育園に通っている人」などはカウントしていない自治体が多いので、そこは割り引いて考えてください。

 そもそも「待機児童の定義」については、平成30年4月からは全国で統一化されることが決まっていまが、現時点では定義がバラバラです。ただし、東京都の場合は暫定措置として、「全ての育休延長者を待機児童に含めているかどうか」だけは調査し、各市区町村がどうカウントしているかを発表しています。

 ランキングで「○」がついている市区町村は、保育園に入れず、育休延長している人を待機児童としてカウントしています。つまり「○」がついている自治体は、真面目に待機児童数をカウントしている自治体ということです。不真面目な自治体よりも、若干、待機児童比率が高めに出てしまう可能性があるので、そこは割り引いて考えてあげるといいでしょう。

休職中、育休中は待機児童にカウント

 平成30年4月以降は、ようやく「待機児童の定義」が統一化されると書きましたが、その概要(特に対象が拡大された項目)は以下の通りです。

「待機児童」の新定義(平成30年4月から)
1)保護者が求職中の人(求職状況を電話、メール、書類で確認)
2)特定の保育園を希望して、待機している人(ただし、紹介された保育園へ20〜30分で登園できなかった、時間が合わないなど、特別な理由がある場合)
3)保護者が育児休業中の人(復職の意思を電話、メール、書類で確認)

 従来、1)求職中の人や、3)育児休業中の人は、待機児童にカウントしていなかったり、カウントするのはごく一部の条件の人だけだったりという自治体が多かったのですが、今後はきちんと待機児童にカウントするようになります。これは大きな前進と言えるでしょう。

 また、2)特定の保育園を希望して、待機している人についても、国として細かく定義したことも評価できます。自治体によっては、「自宅から保育園まで40分はかかりますが、それでも紹介したのだから待機児童として扱いません」という理不尽な対応は認められないということです。

 待機児童問題は根が深い問題で、「隠れ待機児童」がまだまだたくさんいると言われています。「希望の保育園に入れず、転園希望を出している人」はカウントされませんし、「自営業なので、申し込んだところで絶対に希望の保育園に入れないので、申し込みもしない」という人もいます。こうした人々がいることを確認する上でも、待機児童の定義をより現実に沿ったものに変えていってほしいですね。