コロナ禍の影響もあり、需要が高まっているベビーシッターですが、子どもがベビーシッターから被害を受け、ベビーシッターは逮捕されるという事件・トラブルが発生しました。今回は、ベビーシッターを安心・安全に利用するために、知っておきたいポイントをお伝えします。(ライター・松原夏穂)
ベビーシッター会社の種類
ベビーシッターの会社は、大きく分けて2種類あります。
1つは、従来からある請負(派遣)型。
保護者とベビーシッター派遣会社が、契約を結びます。派遣会社は依頼を受けて、自社のスタッフを派遣します。いつも同じベビーシッターが来るとは、限りません。派遣会社にはシッター料金以外に保険料など払いますが、何かあった際は対応をしてくれます。
もう1つは、最近増えてきたマッチング型。
これは、保護者と登録保育者が直接契約を結ぶもの。マッチングサイト運営会社の業務は、あくまで仲介。シッター料金のみの場合もあり、リーズナブルですが、何かあった際は、当事者同士で対応しないといけないケースがあります。
事件後の会社の対応
今回事件が起こったのは、マッチング型ベビーシッターで大手の「株式会社キッズライン(東京都港区)」です。キッズラインはベビーシッター・家事代行サービス紹介の大手です。あくまで、「依頼者とサポーター(ベビーシッター・家事代行)の出会いの場を提供するサービス」です。定期的な依頼だけでなく、当日予約もできるという手軽さが受けて成長しています。なお、サイトによれば、ベビーシッターは、キッズラインが一人ひとり面談・研修を行っているとのことです。
事件後の国や自治体の見解
依然として待機児童が多いという問題があるため、国や自治体ではベビーシッターの利用に補助金を出すなど、後押しをしています。
今回の事件について、どのように見解を持ち、対応しているのでしょうか。
内閣府の見解
内閣府は2019年10月から、ベビーシッター派遣事業に補助をしています。キッズラインは、割引券等取扱事業者として認定されています。そのうち、マッチング型業者はわずか2社であり、狭き門をくぐった業者と言えるでしょう。
なお、内閣府としては以下のような見解を述べています。
「事業を実施する上のルールとして勧告規定があり、その中に認定取り消しもあります。しかし今回の事件は、シッター個人が起こした事件で、会社として犯罪を起こしたわけでないので、認定取り消しまで、議論されていません。とはいえ、会社から改善報告は受けていますし、内閣府としても再発防止に向けていろいろ考えています」
参考:内閣府 企業主導型ベビーシッター利用者支援事業における「ベビーシッター派遣事業」の令和2年度の取扱いについて
厚生労働省の見解
一方で厚生労働省は、どんな見解・対応をしているのでしょうか。
2014年、マッチングサイトを通じて、資格を持たない男が保育士であると偽り、子どもを預かり死亡させる事件がありました。これを受けて厚生労働省は、ベビーシッターの都道府県への登録を義務付けました。その他に、利用の際の留意点を作成し、公表しています。
以下が、厚生労働省の見解です。
「キッズラインが行っているのは、保護者と保育者の直接契約のマッチング業務です。一方で、今回逮捕されたのは、ベビーシッター個人だから、マッチングサイトそのものに罰則規定はありません。しかし、無関係とは言えないので、ウェブサイトの『ベビーシッターなどを利用するときの留意点』を改訂しました。サイトに登録しているからといって、安心せず親の目で見て欲しいです。再発防止に向けては今後、専門家を招いて検討します」
参考:厚生労働省 ベビーシッターなどを利用するときの留意点
なお、厚生労働省では「子どもの預かりサービスのマッチングサイトに係るガイドライン」を作成しており、それに適合しているかの状況を調査し、調査結果を公表するサイト「ガイドライン適合状況調査サイト」もあります。ただし、登録時の都道府県知事等への届け出等の確認や利用規定の遵守の徹底、相談への対応など、ガイドラインの遵守を確認しているものであり、法令上の罰則規定は特にありません。とはいえ、一定のチェック機関にはなっているので、参考にしたいところです。
東京都福祉保健局の見解
東京都福祉保健局では、一部の区や市に対して2018年より、ベビーシッター利用支援事業を行っています。待機児童などに対して、ベビーシッター利用料の補助を行うもので、一時間150円でベビーシッターを受けられます。
東京都福祉保健局では、「問題のマッチングサイトについては、現在調査中」とのこと。なお、「サービス提供約款の中には『認定取消』条項があるので、今後取り消しの場合もあるかもしれない」とのことでした。
まとめ 保護者の目で確かめて、活用を
各行政はそれぞれ、何らかの対策は行っているものの、ベビーシッター個人の問題として扱っているようです。今回逮捕された男性シッター2人は、保育士資格を所有していたので、資格の有無だけで判断が難しいのも事実でしょう。
事件・トラブルもありますが、ほとんどのベビーシッターは真面目に働き、保護者に感謝されています。
ベビーシッターを利用している、自営業の女性(4歳児のママ)は、次のように、メリットを話します。
「生後2カ月から子どもを預かってもらえて、無事仕事復帰できました。自分にできない遊びを教えてもらって良かったです」とのことです。
なお、自営業の女性は、「シッター会社は、知り合いの紹介で選びました。マッチングサイトは、あまり使いませんでした。ネットには軽い自己紹介しかなくて、人間性が伝わってこないんですよね」という考えでした。マッチングサイトを使うにしても、なるべく、ベビーシッター本人の顔が見えてくるようなサイトを活用したいところです。
筆者自身も子どもが病気のとき、預かってもらえたのは本当に助かりました。
その際も、シッター会社の代表者から1時間ほど丁寧にサービスの説明を受けました。その後、「この会社なら安心だ」と思い、契約し、トラブルもなくサービスを受けられました。
ベビーシッターは本当に良いサービスなので、保護者がしっかりした目を持って、上手に利用していきたいですね。
保護者の方は、厚生労働省の「ベビーシッターなどを利用するときの留意点」を、しっかり読みましょう。今回の逮捕を受けた改訂では、「マッチングサイト」の表記が以前より目立ちます。また、「カメラなどで子どもの様子を見る」、不満や疑問については「都道府県や市町村の保育担当部署、地域の消費生活センターなどにも相談を」と、踏み込んだ内容になっています。
以下、抜粋を掲載します。
厚生労働省「ベビーシッターなどを利用するときの留意点」抜粋
1.まずは情報収集
公益社団法人全国保育サービス協会のウェブサイトにある加盟会社のリストや、自治体のウェブサイトなどで、情報収集。マッチングサイトを通じての利用の場合は、特に詳細に。
保育料の安さや頼みやすさだけでなく、信頼できるかを念頭に置く。
2.事前に面接
子どもを預ける際に、ベビーシッターに対する希望を明確に伝える。マッチングサイトを通じて依頼する際は、インターネットの情報だけを頼りにするのではなく、必ずベビーシッターと面会し、子どもを預かる方針や心構えなどについて質問し、信頼できる人物か確認。また預ける際に、必ず面会したベビーシッター本人に預ける。
3.事業者名、氏名、住所、連絡先を確認
子どもを預ける際には、事業者名・ベビーシッターの氏名・(事業所の)住所・連絡先を必ず確認。ベビーシッターの身分証明書のコピーももらう。特にマッチングサイトを通しての場合は、都道府県に事業者として届け出をしているかも確認。
4.保育の場所の確認を
5.登録証の確認を
6.保険の確認を
万が一の事故に備えて、事業者やマッチングサイトの運営者等に、保険に加入しているか確認。
7.預けている間もチェックを
預けている間も、子どもの様子を電話やメールで確認。カメラなどで子どもの様子を見たいと伝える方法も。
8.緊急時における対応を
9.子どもの様子の確認を
10.不満や疑問は率直に
ベビーシッターに対する不満や疑問が生じた場合は、ベビーシッターを派遣した事業者やマッチングサイトの運営者等にすぐ相談しましょう。内容によっては、事業者等ではなく、都道府県や市町村の保育担当部署、地域の消費生活センターなどに相談しましょう。
参考:厚生労働省 ベビーシッターなどを利用するときの留意点