保育園から子どもが発熱したと連絡があってお迎えに行ったけど、家に戻ってきたら熱が下がって元気にしているってこと、ありませんか? 特に新しく保育園に通い始めた子どもたちのお母さんは、慣らし保育(ステップウィーク)がうまくいくかどうか、不安になることもあると思います。「私、仕事にちゃんと復帰できるのかしら…、続くのかしら…」と思っているお母さんもいらっしゃると思います。そんな子どもあるあるを、今回もご紹介します。(はぁもにぃ保育園 園長 山下真由美)
そもそも何度から発熱なの?
日本では感染症法※1の届け出基準に「『発熱』とは体温が37.5℃以上を呈した状態をいい、『高熱』とは体温が38.0℃以上を呈した状態をいう」※2と書かれています。
また、予防接種などの予診票に「明らかな発熱のある人(37.5℃を超える人)は予防接種を受けられない」という注意書きもあります。
※1 正式名称は、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律
※2 厚生労働省「医師及び指定届出機関の管理者が都道府県知事に届ける基準」第1全般的事項 2発熱と高熱より
子どもの体温は大人よりも高めですが、発熱は37.5℃とされており、多くの保育園で登園時に必ず検温をして37.5℃以下のお子さんをお預かりするという流れになっています。
しかしながら、平熱が低め・高めのお子さんもいらっしゃるので、ひとつのルールとして、37.5℃を超えたら大事をみて、保護者の方にご連絡をし、お迎えに来ていただいていますが、みんながみんな、発熱したからといって、ぐったりしていないのです。
保育園では、発熱だけでなく、顔色や身体の発疹や嘔吐などの症状がないか、またミルクの飲み方や給食の食べ方が悪くないかなど、あらゆる面から子どもの体調管理をしています。
お母さんからの質問
お母さん
筆者
お母さん
筆者
お母さん
また自宅でこのまま、昨日みたいに下がるかと思うと、付き合いきれないなぁって思って。
筆者
お母さん
筆者
お母さん
筆者
子どもは目的を果たすために熱を出せる!!
これは、ひとつの可能性だと思って聞いてください。
〇〇君の目的が、お母さんに迎えに来てもらうこと、そして家に帰ってお母さんと遊ぶこと(過ごすこと)だとしたらどうでしょう? まだ慣れない、そして信頼関係のできていない先生や環境に対して、熱を出すという行為で自分の意思表示している可能性もあります。
発熱だけでなく、頑なにミルクを飲まないとか、なんとなく給食の食べ方が悪いとかも、赤ちゃんの精一杯の表現なのかもしれません。発熱してまでもお母さんに会いたい気持ちがあるって、本当にけなげですよね。
生まれる前からずっと、お母さんと一緒にいたのに、離れることや環境が変わることは、子どもにとって大きな出来事なのです。
赤ちゃんは、もともとスゴイ力を持っています。6カ月頃になると、記憶力が育ってきて、おもちゃを隠しても「今はないけど、さっきまであった」ということがわかりはじめます。また、お母さん(人)の表情の意味がわかるのが、10カ月頃と言われています。
赤ちゃんや、言葉がわからないようにみえる子どもでも、実は自分の置かれている状況がわかっているのです。
今まで家にいたのに保育園という知らない場所に預けられ、知らない人とすごすこと。どうやらそれは、一日だけでなく、これから毎日になりそうなこと。
それらが全部わかっているのだとすると、定期的に先生が子どもの熱をはかって、その時に、時々友だちが家に帰れること。自分も熱を出すと、お母さんが迎えにきてくれるということも、実はわかっているのかもしれません。それぐらい赤ちゃんはなんでもわかっていて、「賢い小さな人」だと、いつも思うのです。
お母さんの気持ちと子どもの気持ちは一心同体
ここで、最初のお母さんとの会話を少し思い出してください。
お母さんは、熱が出た〇〇君のことも、もちろん心配ですが、どちらかというと、自分が仕事に復帰できるのかどうかを心配されていましたね。当然のことだと思います。仕事をするために保育園に預けていらっしゃるわけですから。
そこで知っておいてほしいのが、子どもは、赤ちゃんであっても、お母さんの気持ちと一心同体ということです。
お腹の中にいた時からずっと一緒だったわけですから、お母さんの不安や心配、恐れていること、嫌だなと思っていること、それも全部子どもには伝わっています。妊娠期間だけでなく、それは、生まれた後も同じです。
お母さんの気持ちの中で、不安や心配、怖さ、恐れ、イライラは、子どもたちも同様に感じて、お母さんの気持ちを代弁するかのように、子どもが鏡のように表現してくれます。それぐらい、子どもはお母さんのことが大好きなのです。これは、数値化できるわけではありませんが、お父さんよりお母さんのほうが、影響力が圧倒的に強いです。(お父さん、がっかりしたらごめんなさい。)
子どもは熱を出すものと、受け入れる
ちょっと乱暴な言い方かもしれませんが、そもそも子どもは大人よりも発熱しやすいと思ってください。前述したとおり、ちょっとの環境の変化や季節の変わり目、心理的側面からも、子どもは繊細なので発熱というかたちで、自分の状況を表現します。
子どもの発熱は、大人がコントロールできないとあきらめてください。もちろん、物理的に、免疫力をつけて強くなる方法もありますが、時間もかかります。預けた最初の何か月~1年たって、オールシーズン体験すると大抵のお子さんが、嘘のように強くなっていきます。または、乳児(0歳~2歳)の頃はよく熱を出していたのに、幼児(3歳~5歳)になったら別人のように風邪などもひかなくなります。
「子どもが熱を出すと、仕事ができなくなる」という事実があり、お母さんたちが困ることはよくわかります。
しかし、その不安や心配、イライラを子どもが表現するという仕組みだとすると、一番早いのは、お母さんが「子どもは熱を出すものだ」という風に思って、「お母さんと会いたかったのね、お母さんも会いたかったよ、ありがとう!!」と開き直って、子どもと接することです。
発熱自体は悪いことではない
いかがだったでしょうか?
もちろん発熱は、保育園という集団生活の中で、感染症の可能性もありますので、高熱が続いたり、発熱が低くても3日以上続くようなら、病院の受診をおすすめしますが、家に帰って熱が下がっているケースを、子どもの心理的な面から考えて、ひとつの可能性として書かせていただきました。
発熱自体は、子どもの身体の中で、軽い風邪を引くことで菌を死滅させ、より強い身体になるために免疫をつけていこうとしている働きです。より身体が強くなり、保育園にも慣れていくための大切なプロセスなのです。
何度も保育園から呼び出されたりすると、行き場のない不安や焦りの感情を持たれるお母さんもいらっしゃるかと思いますが、重篤な感染症にならずに、家に帰って熱が下がるということは、喜ばしいことだという認識で、その時、お子さんと一緒にいられる貴重な時間を、お母さん自身もおおらかな気持ちでゆったりと過ごしていただけるといいかなと思います。
それでももし、お子さんに対してのイライラや、お仕事への不安などありましたら、いつでも保育園の園長先生やベテラン先生もご相談にのってくださると思います。保育園はお母さんたちの応援団でもあるので、頼りにしてくださいね。
【山下真由美】 板橋区認可保育園・はぁもにぃ保育園園長 / 保育コミュニケーション協会 認定ファシリテーション講師 保育士の為の新人教育、メンタルケア、チームビルディング研修など講師としても活躍中 (イラスト はぁもにぃ保育園・栗林実花)
<編集協力・松原夏穂>