メディアによく登場する「どろんこ保育園」。保護者による本当の評判は?

メディアによく登場する「どろんこ保育園」。保護者による本当の評判は?

 社会福祉法人グループが運営する「どろんこ保育園」。メディアでもよく取り上げられていることから、ご存知の方も多いのではないでしょうか。毎年、新設の園を開所し、人気が高いものの、一方でよくない噂もあるようです。そこで、第三者評価を元に社会福祉法人どろんこ会グループについて評価してみました。すると、安全対策や保護者への対応など、利用者の満足度が低い面も見えてきました。

「保護者の評価が高い保育園ランキング」では、点数は平均点以下だが、保護者の満足の声は多い

 東日本を中心に「どろんこ保育園」「メリー★ポピンズ」という名の保育園を50園以上運営している社会福祉法人どろんこ会グループ。「にんげん力を育てる」を保育理念とし、裸足での保育や、田植え・稲刈り、畑仕事、ヤギやニワトリのお世話といった体験型保育が好評を得ています。

 東京都内では12の園を展開し(2018年4月現在)、その内2/3が、平成27年度以降に開所しており、急拡大している様子が伺えます。そのため、東京都で第三者評価を受けているのは、「清瀬どろんこ保育園」(清瀬市)、「板橋仲町どろんこ保育園」(板橋区)、「メリーポピンズアトレ大森ルーム」(大田区)、「メリーポピンズ東武練馬ルーム」(板橋区)の4園です。また、株式会社日本福祉総合研究所、株式会社ゴーエストの2つの関連会社を持ち、株式会社ゴーエストが運営する「メリーポピンズ豊洲ルーム」(江東区)も第三者評価を受けています。この5園の評判・評価を元に、社会福祉法人どろんこ会グループの実態に迫っていきましょう。

 まずは、当サイトの「保護者の評価が高い保育園ランキング」における、どろんこ会グループの5園の点数と順位はどうなっているでしょうか。

保護者の評価が高い保育園ランキングは東京都が発表している保育園の「第三者評価」を元に、認可保育園、認証保育園を評価したものです。第三者評価では、実際にそれぞれの保育園を使っている保護者に、「サービスへの満足度」、「安心・安全性」、「要望・不満への対応力」などについてアンケートを行なっており、その結果を点数化して、他の保育園と比較できるようにしました。

どろんこ会グループ5園の実力を評価!

保育園名 点数
(1000点満点)
各市区町村における保育園ランキング順位
清瀬どろんこ保育園

846点

清瀬市で8位(10園中)
板橋仲町どろんこ保育園

868点

板橋区で51位(87園中)
メリーポピンズアトレ大森ルーム

883点

大田区で61位(108園中)
メリーポピンズ東武練馬ルーム

841点

板橋区で72位(87園中)
メリーポピンズ豊洲ルーム

901点

江東区で51位(87園中)
5園の平均点

868点
(東京都の平均は882点)

 
 当サイトの「運営法人種別の平均点(東京都の認可・認証保育園が対象、平成30年度)」をみると、東京都全体の平均点は882点、社会福祉法人全体の平均点が876点ということから、どろんこ会グループ5園の平均点868点は、平均点よりも若干劣るという位置にいます。

 また順位を見ると、飛びぬけて上位にランクインしている園はなく、どこも中位以下にいます。このランキングは保護者の評価を中心に点数化しているので、この5園については、保護者の評価はあまり高くないということが言えます。

 とはいえ、第三者評価の利用者アンケートでは「商店街ツアー、畑作業、座禅などいろんな経験を、子ども達がじっくり取り組めるよう計画されていて、とても感心しています」「ヤギとの触れ合いは、子どもも楽しみなようです」(板橋仲町どろんこ保育園の保護者のコメント)といった声や、「食育や商店街ツアーなどいろいろな種類の経験をさせてくれる」「保護者にはできない自然体験をさせてもらって感謝しています」(清瀬どろんこ保育園の保護者のコメント)などの意見があり、自然や地域と触れ合うさまざまな取り組みに、保護者も満足しているのがうかがえます。

安全対策の満足度はかなり低め!実際に園児の見失いが2件発生していた

 では、次にどろんこ会グループ5園の得点の内訳を元に、より細かい運営の実態に迫っていきましょう。第三者評価における保護者へのアンケート調査について、各設問のグループ5園の平均点と、東京都全体の平均点を比較して、弱点を見つけたいと思います。赤字は、特に点数が低い項目です。

保護者アンケート調査から、どろんこ会の弱みが見えてくる

保護者への質問内容 どろんこ会グループ5園の平均点 東京都の平均点
サービス力
提供される食事は、子どもの状況に配慮されているか 47.6点 47.9点
保育所の生活で身近な自然や社会と十分関わっているか 48.2点 44.1点
保育時間の変更は、保護者の状況に柔軟に対応されているか 46.0点 45.6点
行事日程の設定は、保護者の状況に対する配慮は十分か 43.5点 43.0点
子どもの保育について家庭と保育所に信頼関係があるか 42.8点 44.8点
職員の接遇・態度は適切か 44.2点 45.3点
安心・快適性
安全対策が十分取られていると思うか 37.1点 43.0点
施設内の清掃、整理整頓は行き届いているか 44.7点 46.6点
病気やけがをした際の職員の対応は信頼できるか 45.2点 46.8点
子ども同士のトラブルに関する対応は信頼できるか 40.0点 43.6点
子どもの気持ちを尊重した対応がされているか 44.9点 46.8点
子どもと保護者のプライバシーは守られているか 45.5点 46.1点
保育内容に関する職員の説明はわかりやすいか 44.6点 45.1点
要望への対応力
利用者の不満や要望は対応されているか 39.5点 44.2点
外部の苦情窓口(行政や第三者委員等)にも相談できることを伝えられているか 33.8点 37.0点
※第三者評価の保護者へのアンケート調査について、保護者の回答を点数化した
 特に点数が低いのが、「安全対策が十分取られていると思うか」の設問です。37.1点と、東京都平均43.0点を大きく下回っており、安全対策に対する満足度の低さがうかがえます。第三者評価の利用者アンケートには、「門に鍵はついているが、保護者の開閉が徹底されていない」(清瀬どろんこ保育園)、「入り口の鍵の故障が改善されるのに時間がかかっていた」(メリーポピンズ豊洲ルーム)との声があがっていました。

 実際に「駒沢どろんこ保育園」(世田谷区)では、ここ1年以内に園児の見失いが2件発生しています(見失いなどについて報じた東洋経済オンラインの記事と、それに対する本部の見解。見失いについて、本部は認めており、再発防止策を提示しています。それゆえ、より徹底した安全対策が望まれるところです。

 もう一つ、評価が低かったのは、「外部の苦情窓口(行政や第三者委員等)にも相談できることを伝えられているか」の項目です。50点満点中33.8点で、東京都平均37.0点を大きく下回っています。清瀬どろんこ保育園にいたっては、「はい」の回答率が最も低く、32.7%しかありませんでした。

 なぜ利用者は、苦情を外部に相談できることを知らないのでしょうか。

 社会福祉法人どろんこ会グループが運営する、各保育園のホームページを見ると「苦情受付ホットライン」の電話番号とメールアドレスが記載されてします。この問い合わせ先は、全園共通のため、本部が管轄している相談窓口です。そのため利用者は、何か問題が生じた時には、ここに連絡することとなり、外部に苦情窓口があることを認識していないのかもしれません。

アンケート調査の回答率が低い!板橋仲町どろんこ保育園は4割以下

 また、気になるのが利用者アンケートの有効回答率です。どろんこ会5園の平均回答率は60%で、東京都全体の平均回答率67%を大きく下回っています。

保護者へのアンケート調査の回収率が低い!

  どろんこ会5園の平均 東京都の平均
利用者アンケートの有効回答率 60% 67%
 とくに「板橋仲町どろんこ保育園」にいたっては、利用者総数70人に対し26人しか回答していません。利用者の回答数が少ないだけに、もしかすると本当の保護者の意見は反映されていないのかもしれません。また、回答が少なければ、保育園としても自身の保育園の弱みや改善点を把握して、改善することができないという問題があります。

 ちなみに、社会福祉法人どろんこ会グループが運営する5つの園は、すべて「株式会社学研データサービス」が評価し、利用者へのアンケートの回収は、保護者が直接評価機関へ郵送する方法を取っています。仕事を持つ保護者とって、郵送での回収は手間になってしまうため、回答率が下がってしまった可能性もあります。回収率のアップのために、保育園での回収も併用すべきだったかもしれません。今後は、各園や本部も、きちんと保護者に呼びかけて、回収率向上を目指すべきでしょう。

保護者の考えを聞く姿勢は低く、過程と保育園の信頼関係は薄い!

 他にも、「子どもの保育について家庭と保育所に信頼関係があるか」「利用者の不満や要望は対応されているか」「子ども同士のトラブルに関する対応は信頼できるか」の5園平均点が、東京都の平均点より低く、保護者への配慮や対応についての満足度は高くありませんでした。社会福祉法人どろんこ会グループの全ての保育園の評価が揃っていないものの、5園の傾向からは、グループ全体にそうした傾向があるのではないかということが予想されます。先ほどの東洋経済オンラインの記事では、職員による子供虐待疑惑が報じられましたが(本部側は否定)、ベースには、ほかの保育園に比べて、過程と保育園の信頼関係が薄いという問題があるのではないでしょうか。

 社会福祉法人どろんこ会グループが運営する保育園は、多くのメディアで取り上げられ、ホームページを見ると、子供にこんな経験をさせてあげたいと思う方も多いでしょう。しかし、当サイトの「保護者の評価が高い保育園ランキング」では、どの園も上位にランクインしていません。

 また、急拡大している保育園は、どうしても保育の質が低下しがちなのは、保育園業界では常識です。年間10保育園近くも開園するとなると人の手当てが間に合わなくなりがちで、心配になります。

 子供たちにとって外遊びや自然体験はもちろん大切ですが、一番重要なのは「安全・安心」の保育であり、保育園と保護者の信頼関係ではないでしょうか。どろんこ会グループの保育園を選ぶときは、少なくとも、事前に保育園の見学を忘れないようにしたいものです。

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