保育園を運営するのは、「自治体が運営する公営」、「株式会社や有限会社といった営利会社」、「社会福祉法人」に大きくわけられます。そこで、「運営法人種別の平均点(東京都の認可・認証保育園が対象、平成30年度)」を作成しました。すると、公営と社会法人に比べ、営利会社の平均点が高い傾向が出ています。意外に思われる方が多いと思いますが、どうしてなのでしょうか。
まずは、運営法人種別の平均点をみてみましょう。
保育園は、株式、社福、公営のどれがいい?
(運営法人種別の平均点、東京都の認可・認証保育園、平成30年度調査)
運営法人種別 | 平均得点 | 標準偏差 (ばらつき) |
施設数 |
営利会社 (うち株式会社) |
899点 (900点) |
42点 (41点) |
560施設 (531施設) |
社会福祉法人 |
876点 |
46点 |
979施設 |
公営 |
875点 |
35点 |
435施設 |
全体 |
882点 |
45点 |
2141施設 |
運営法人種別の平均点は
株式会社が大きくリード
「運営法人種別の平均点(東京都の認可・認証保育園)」は、東京都が発表している保育園の「第三者評価」を元に作成したものです(掲載基準、計算方法はこちら)。「保護者の評判が高く、満足度が高い保育園はどこか」という観点で各保育園を点数化し、さらに運営法人別に平均点を出しました。 「運営法人種別の平均点」をみると、株式会社と有限会社を含む「営利会社」が平均得点899点と、「公営」、「社会福祉法人」に比べて高いことがわかります。 とくに株式会社単体でみると、平均点は900点で、圧倒的に高いといえるでしょう。東京23区の「保護者の評判が高い 保育園ランキング」をみても、世田谷区、杉並区、江東区、目黒区など15の区で株式会社が運営する保育園が1位にランクイン。市町村でも、国分寺市、立川市、稲城市など11の市で株式会社が運営する保育園が1位になっています。 また東京都全体のトップ10のうち、株式会社運営が8割をしめていました。 評価の高い株式会社の保育園をみると、認証保育園で小規模、且つ、比較的歴史が浅い保育園が多いようです。 株式会社が運営する保育園の中で最も総合得点が高かったのは、「株式会社Peekaboo」が運営する、足立区ランキング掲載の「きりん保育園」(認証保育園)でした。978点(1000点満点中)と、株式会社の平均点からも大きく上回っています。「きりん保育園」は、平成23年設立で、26人の子供を預かっています。第三者評価の保護者のコメントをみると、「連絡帳やお迎えの時の話が楽しみ」「どの先生にも相談しやすい雰囲気がある」などの声があがっていました。 世田谷区ランキングで1位にランクインし、総合得点975点を獲得した、株式会社日本デイケアセンターが運営する「砧南らる保育園」(認証保育園)も、定員30人の小規模保育園です。第三者評価の保護者のコメントには「子どものことを愛していないとここまでできないと感じることがある」「非常に大切にしてくれていると思う」との声がありました。 株式会社が運営する保育園というと、多彩なプログラムや独自の取り組みなどが高い評価の要因かと思われがちですが、それらにさることながら、職員の子供たちや保護者に対する丁寧な対応、保護者との信頼関係構築ができている点なども、大きく影響しているようです。
大規模運営の株式会社による保育園は
比較的評価が高い傾向がある
では、株式会社の規模は大きい方がいいのでしょうか、小さい方がいいのでしょうか。 多数の保育園を運営している株式会社としては、「アスク〇〇保育園」と名がつく保育園を多数展開する株式会社日本保育サービスや、「ポピンズナーサリースクール〇〇〇」といった保育園を運営する株式会社ポピンズなどがあります。 他の記事(保護者の評判が高い「運営法人ランキング」)で説明していますが、10以上の保育園を運営している株式会社は、全て平均点を上回っていました。やはり規模が大きい株式会社は、運営のノウハウなどがあるため、評価が高いようです。 では、1園のみを運営している株式会社の評判・評価はどうなっているでしょうか。 先にあげた、株式会社の中で評価の高い「株式会社Peekaboo」「株式会社日本デイケアセンター」はその一つです。1園の運営でも、評価が高い保育園は多いです。 一方で、株式会社の中で評価が低かった保育園としては、板橋区ランキング掲載の「保育ルームフェリーチェ練馬中村橋園」(認証保育園)を運営する「株式会社アルコバレーノ」も、1園のみを運営しています。第三者評価の保護者のコメントには「先生が1名のときは不安」「目が届いていないのかな、と思う時も」などの声がありました。 規模の小さい保育園については、評価にばらつきがある傾向が見られました。
公営と社福の平均点はほぼ一緒だが、
社福はばらつきが大きい
続いて、「社会福祉法人」をみてみましょう。平均点は876点と、全体の平均点である882点よりも低いという結果になりました。 社会福祉法人が運営する保育園は標準偏差が大きく、「ばらつき」が大きいことがわかります。「保護者の評判が高い 保育園ランキング」全体で1位にランクインした、社会福祉法人梨の木福祉会が運営する、青梅市ランキング掲載の「青梅梨の木保育園」(認可保育園)は、929点(1000点満点中)と高評価を得ています。第三者評価の保護者のコメントには「職員がいつもどっしり構えて対応してくれて、優しい言葉に帰りはゆっくり来てくださいと心配までしていただき、素晴らしいとしか言いようがありません」などがありました。 一方、社会福祉法人の中で評価が低かったのは、社会福祉法人なごみ福祉会が運営する、世田谷区ランキング掲載の「北烏山なごみ保育園」(認可保育園)で、721点でした。第三者評価の保護者のコメントには「もう少しきびしい先生がいても良いかと思います」「園の考え優先で聞き流されていると感じることがある」などの意見がありました。 社会福祉法人は、地元の資産家、地主、お寺などが設立しているケースが多いです。保護者を重視する保育園もありますが、中にはワンマン経営の弊害が目立つ保育園もあることが、ばらつきを生んでいるのでしょう。
公営の保育園は平均点はそこそこだが、
今後、株式会社や社福に移行する可能性も
最後に、自治体が運営する「公営」保育園を見て見ましょう。平均点875点と、平均点を下回っています。保育園業界では「公営」がもっとも優れているという考えの人が多数いますが、数値で見ると、必ずしもそうではありません。ただし、標準偏差(ばらつき)は35点と、社会福祉法人や株式会社に比べて、その差は小さいといえます。公営の保育園の場合、ある程度自治体で保育方針が決まっていたり、歴史ある保育園が多く、それまでに培った運営の基盤がしっかりできていることなどから、「ばらつきが少ない」という結果になったといえるでしょう。 なお、公営の保育園は、民営化が進んでいるため、公営の保育園に入園しても、後に、株式会社や社会福祉法人の運営に移行することもあります。また、運営母体が移行しても、保育園名がそのままで、分かりづらい場合もあるようです。 今回の比較からもわかるように、保育園は、運営母体によっても大きな差がありますので、保育園を選ぶ時は、運営しているのが公営、株式会社、社会福祉法人なのかも確認して選んでくださいね。
※「運営法人種別の平均点(東京都の認可・認証保育園、平成30年度)」は、東京都が発表している保育園の「第三者評価」を元に、各保育園の保護者の満足度、評判を点数化し、運営法人ごとに平均点を割り出したものです。第三者評価では、実際にそれぞれの保育園を使っている保護者に、「サービスへの満足度」、「安心・安全性」、「要望・不満への対応力」などについてアンケートを行なっています。約7割の認可・認証保育園をカバーしています(掲載基準、計算方法はこちら)。