災害時に保育園は救援すべきなのか? その後の「タイムライン防災」

災害時に保育園は救援すべきなのか? その後の「タイムライン防災」

連載「脇さんの連載」(第14回)
保育園の危機対応アドバイザー・脇貴志

2019年はたびたび台風が到来し、日本中の堤防が決壊するなど、大変な被害をもたらしましたが、こうした災害に対する保育園側の対応は、まだまだ発展途上です。大規模災害が予想される際は、あらかじめどう行動するか決めておくという「タイムライン防災」の考え方が広がりつつありますが、保育の現場では、まだまだかもしれません。

タイムライン防災は普及しつつある

2019年は台風15号が関東を直撃し、千葉県の大部分を長期の停電におとしいれる被害をもたらしました。その後、台風19号では日本中の堤防が決壊し、北陸新幹線の完全普及には約1年間かかるという浸水被害をもたらしました。これらの2つの台風時にも、JAL、ANA、JR、私鉄各社だけでなく、ショッピングモールやコンビニなども積極的にタイムライン防災※を取り入れて早めの避難を実施していました。

※「タイムライン防災」とは、災害の発生を前提に、防災関係機関が連携して災害時に発生する状況をあらかじめ想定し共有した上で、「いつ」、「誰が」、「何をするか」に着目して、防災行動とその実施主体を時系列で整理した計画

参考記事はこちら「台風シーズン到来!開ける保育園と閉める園のどちらを信頼しますか?」

5段階の大雨警戒レベルのうち「警戒レベル3」以上では休園を決めていた千葉市の保育施設は、取り決め通りに休園を実施したようです。しかしながら、その他の地域の保育施設は、担当行政が首を縦に振らず、ギリギリのタイミングで休園となり、現場が混乱したみたいです。

保育施設はカヤの外

社会の中では、タイムライン防災の考え方がどんどん進み、具体的な運用もできています。でも、その社会の進化についていけていないのが保育施設なのです。

10月25日に記録的な豪雨が千葉県と福島県を襲いました。この雨で千葉県長柄町にある認定こども園では、25日には園内まで水が来て、周辺も広く水につかりました。そして、その日、園に泊まった子どもは4人いて、迎えに来た保護者も夜までは保育室に避難していたということです。また、この園では、長男を預けていた54歳の男性が、車で迎えに行く途中に濁流に巻き込まれ、死亡しています。この豪雨では、千葉県で9人、福島県で1人の計10人が死亡していますが、そのうち5人が車に乗っていて巻き込まれています。

そもそもこの認定こども園が施設を休園していたら、園児の父親は死なずに済んでいますし、4人の子どもも不安な夜を過ごさなくてよかったと思います。

タイムラインの本質

タイムライン防災の考え方の肝は、予測される進行型の災害に対して、災害が始まる前にベストな準備を済ませて、災害が始まったら動かなくても良い体制を作ることにあります。

現在、雨はかなりの確立で予測が可能になってきています。昔は気象庁の天気予防しかありませんでしたが、今は、ウェーザーニュースを筆頭にさまざまな会社やサービスがあり、天気に関するアプリも個人の目的別に選択することが可能になっています。

そして、それらから得られる天気に関する情報を最大限活用し、社会のいたるところで来るべき災害に対してベストをつくす動きが展開されているし、毎年、進化もしています。災害が始まってから、車などで移動し、被災するのは、もはや二次災害といっても過言ではないのです。史上最大規模とまでいわれた台風19号でも、被害者があれだけ少数で済んだのは、タイムライン防災の考え方が有効に機能したからではないでしょうか。

災害時における行政の役割

台風19号が日本を縦断しているとき、私は京都駅で足止めをくっていました。その前日は、京都府のある地域で保育関係者の集まりに参加していました。そこでも、「明日は休園にすべきだ」と私の意見を聞いてくださった園長先生方は、台風が再接近する前日に休園を決定してくださいました。その市にある認可私立保育園は休園の判断をしてくださいました。私は、本当に嬉しかったです。ちなみに、公立保育園は午前中だけ園を開けて午後から休園というわけのわからない方針を打ち出していました。

この市の園長先生から、後日談が私の元へ届きました。「脇さんと別れてから、行政に休園する旨を連絡しようと電話したが、何度しても出なかった。行政には一応、言わなければならないので、(園長先生方の)代表者が役所に行ったところ、行政の担当者は避難所を開設する仕事に出ていて、担当課に誰もおらず、電話だけがじゃんじゃん鳴っていた。」という状況だったそうです。休園の判断はしない。避難所開設のための準備で電話番もいないほど人手不足。これが地方行政の現状なのかもしれません。

私は、この後日談を聞いて、現在の激しくなっている進行型災害に行政が対応するのは限界なのではないかと疑問を持ち、今は、それが確信にかわっています。

自分の身は自分で守るのが原則

結局、進行型の災害に関しては、自分で自分の身を守るしかないのだと思います。つまり、自分や家族のタイムライン防災を計画し、実行することが重要なのではないでしょうか。天候に関する情報は、スマホで取れます。その情報を元に、自分たちの避難計画、避難行動を実行するのが最も確実な方法だと思います。

それができるようになっていれば、たとえ、園が開いていたとしても、今日は登園させない。という判断ができ、余計な動きをしなくてすみます。余計な動きをしなければ、遭わなくても良い災害に遭うこともなくなります。

「厚生労働省では、ようやく、災害時などで保育施設を休園にする基準作りに着手したようだ」という噂を耳にしました。もしかしたら、来年は保育施設にも社会と同様のタイムライン防災が来るかもしれません。でも、そのようなものに期待するよりは、自分たちの身は自分たちで守るという基本原則に沿って、準備した方がいいと思います。

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