最近は、「ベビーシッター」の認知度が少しずつ高まっていて、利用者も増えています。認可保育園に入園できなかった際の選択肢として、認可外保育園の他に挙げられるのがベビーシッターですが、現状や選び方・使い方についてお伝えします。(ライター・松原夏穂)
ベビーシッターとは? 保育士との違いは?
ベビーシッターとは、「親の代わりに自宅などで乳幼児の面倒を見る人」のことです。資格として、公益社団法人全国保育サービス協会が認定する「認定ベビーシッター」がありますが、国家資格ではないので、これがなくても一定の条件(子育て経験があるなど)があれば、働くことは可能です。お世話する子どもの人数は1人か、多くても数人。また、自宅で預かってもらう場合と、施設で預かってもらう場合の2パターンがあります。
ベビーシッターは、公益社団法人全国保育サービスのサイトで、事業者を調べることができます。この公益法人は厚生労働省が主催するベビーシッター研修会に全面協力をし、協会独自の総合保障制度の導入行うなど、信頼と実績のある団体で、全国に約120の事業者が登録しています。
対して、保育士は国家資格。大学・短大・専門学校などで、児童福祉について学んだ後、試験に合格する人が大半です。子どもがケガや病気になり、集団保育が難しい場合、または低月齢や、保育園・幼稚園の開園時間外など、特別なケアを必要とする際には、体系的に保育について学んでいるので心強い味方です。ただし、お世話する子どもの数は年齢が上がるとともに多くなり、5歳児ともなると、保育士一人に対して、子どもが30人近くになることもあります。
平均的な料金と、利用方法は?
ベビーシッターを利用する際、まずは事前に事業所に登録。入会金や年会費を支払い会員になるか、それらを支払わずビジター会員になるなど、方法は様々です。
入会金の相場は10,000円~、年会費は5,000円~、基本料金は1時間1,500円~(会員の場合)。ビジターの基本料金は、少し高額に。更に病児・病後児、早朝・深夜利用、前日・当日の予約など、依頼に応じて追加料金が発生します。また2時間以上の利用を条件としているところが多く、1時間での利用が可能であっても高額になることがあります。
ベビーシッターの料金は保育園に比べれば、高い方ですが、1対1で預り、各家庭の希望に可能な限り対応してくれるので、適正な価格だと思います。そんな悩みを緩和してくれるのが、福利厚生割引や自治体の助成金です。自身や配偶者の会社が福利厚生代行会社と提携しているか、またお住まいの自治体に助成制度があるか確認してみましょう。
例1)株式会社ベネフィット・ワン「すくすくえいど」=1時間300円割引など(但し、金額は勤務先の契約内容によって異なる)
例2)千代田区=ベビーシッターの利用料金の半分を助成など
利用の手順は?
利用の手順は、以下の通りです。
- 事前に事業者に登録する。
- 希望日時を、電話・メール・FAXなどで連絡。合わせて、預かり内容(病児・病後児、夜間・早朝、外出先の預かりなど)を伝える。
- 契約。預かり内容に応じて、ベビーシッターを選定。事前に担当者との面談が可能な場合も。
- 預かり。
- 預かり終了後、支払い。
使ってみての感想は「柔軟で丁寧な対応に満足」
筆者は、単発で度々利用していました。日程が決まっている場合は、1カ月ほど前から予約をしたこともあります。
実際に使ってみての感想は、「思ったよりも使い勝手がいいし、信頼できる事業者であれば、安心して預けられる。連絡帳も書いてくれて、預けている間の様子も分かり、大変助かった」というものでした。「近所の児童センターに遊びに連れて行く」「昼食をコンビニに買いに行くのに同行する」などのリクエストにも対応してもらえたのも嬉しかったです。
留守中の自宅に他人が入ることに、不安を感じる方も多いと思います。そこで、「使用して良い部屋、ダメな部屋をお伝えする」「盗難などの疑いを招かないよう、高価な物、明細など個人情報が分かるものなどを片付ける」を徹底して、不安を解消しました。おかげで利用があると、部屋がきれいになるという嬉しい状況に。
当日はカゴに着替えなどの必要なものをひとまとめにし、健康状態・やって欲しいことをメモに記して渡しました。
預ける際に大切なことは、ベビーシッターを信用すること、そして母親が笑顔で送り出すこと。
終了後は保育レポートを提出してくれたので、安心でした。それでも、不安なことがあれば遠慮せず質問しました。
問題なのは、病気のとき。前日や当日でも割り増し料金を払えば、預かってもらえることが多いですが、インフルエンザが流行る時期は難しいこともあるようです。予防接種をして、いつも以上に健康管理には気をつけました。また、病名が明確でないと預かってもらえないので、少しでも不安に感じたら受診して病名をはっきりとさせるようにしました。
「幼稚園にお迎え後に自宅で預かり」も可能
ときには、「幼稚園にお迎え後に自宅で預かり」もお願いしました。難しいように思うかもしれませんが、準備をしておけば可能です。
預かり予定日の2~3日前に事業所に自宅の合鍵を簡易書留で郵送。これに幼稚園から支給された名札を同封します。保護者以外が送迎する際は、これを提示することが義務付けられていたからです。幼稚園には早い段階で報告。しかし前述したように、ベビーシッターが決定するのは前日のため、「〇月△日、□□という事業所のベビーシッターが、代わりに迎えに来ます」と伝え、確定してから名前・年代を伝えました。
当日朝は、長男に「今日はベビーシッターさんの〇〇さんが迎えに来るよ」と伝えて送り出しました。そして降園時、担当ベビーシッターが社員証と名札を幼稚園に掲示し、長男を引き取りました。
送迎代が加算されましたが、お陰で仕事を休まなくても良かったので、お願いしてよかったと思っています。
待機児童になった場合は「月極利用」も
待機児童になった場合、利用するのが「月極利用」です。月極料金は単発利用より、割安です。
筆者の知人は、産後2カ月で復職。年度途中だったので、保育園に空きがなく、頼れる親類も近所にいないため、月極利用をしました。保育園に比べると、保育料は高いですが産後間もない時期に送迎の手間が省けるのは、母子共に非常にありがたかったといっていました。他の子どもに病気をうつす・うつされるの心配がないのも安心です。
2名のベビーシッターが交代で保育を担当し、散歩に連れていってもらうため、合鍵を渡していたそうです。ベビーシッターは半年ほど利用して、次年度にはベビーシッターを利用したことが考慮されたことで無事、認可保育園に入園できました。今は、病気などの緊急時に利用しているそうです。慣れたベビーシッターなので、母子共に安心とのこと。
小学6年生までを対象にしている事業所が多いので、万一の際の預け先として念頭に置いても良いと思います。
ベビーシッターなどを利用するときの注意点とは?
実際利用する際にはどのような点に注意したら良いでしょうか?
厚生労働省の「ベビーシッターなどを利用するときの留意点」を参考に紹介していきましょう。
ベビーシッターなどを利用するときの留意点(注意点)
1.まずは情報収集
前述の、公益社団法人全国保育サービス協会のHPにある加盟会社のリストや、自治体のHPなどで、情報収集。保育料の安さや頼みやすさだけでなく、信頼できるかを念頭に置く。
2.事前に面接
子どもを預ける前に、インターネットの情報だけを頼りにするのではなく、必ずベビーシッターと面会し、子どもを預かる方針や心構えなどについて質問し、信頼できる人物か確認。また預ける際に、必ず面会したベビーシッターに本人に直接預ける。
3.事業者名、氏名、住所、連絡先を確認
子どもを預ける際には、事業者名・ベビーシッターの氏名・(事業所の)住所・連絡先を必ず確認。ベビーシッターの身分証明書のコピーももらう。
4.保育の場所の確認を
保育の場所が子どもの自宅以外である場合は、事前に見学して、子どもの保育に適切な場所か確認。
5.登録証の確認を
ベビーシッターが保育士や認定ベビーシッターの資格を持っている場合は、登録証の提示を求める。
6.保険の確認を
万が一の事故に備えて、保険に加入しているか確認。
7.預けている間もチェックを
預けている間も、子どもの様子を電話やメールで確認。
8.緊急時における対応を
子どもの体調が急変するなどの緊急事態が生じた際に、ベビーシッターからすぐに連絡を受けられる体制を作る。
9.子どもの様子の確認を
子どもの引き渡しの際、保育の内容や預けている間の様子について報告を受ける。
10.不満や疑問は率直に
ベビーシッターに対する不満や疑問が生じた場合は、派遣した事業所等にすぐ相談。
※参考ページ:厚生労働省
このように列挙すると、「注意点が多くて大変だな」と、思うかもしれません。しかし、保育中に子どもが犠牲になる事故も報告されているため、ここは慎重に調べておきたいところです。
運営方針、病児対応などで事業所を選択
筆者は長男(2018年現在小学3年生)が0~5歳の時に、2カ所を利用しました。
当時は、公益社団法人全国保育サービス協会のHPの存在を知らず、「ベビーシッター 東京都」と検索して、ひたすら探しました。厚生労働省のHPも知らなかったので、本やインターネットを参考に選ぶポイントも考えました。
その際、以下のようなポイントを基準に選びました。
- 利用対象区域
- 運営方針
- シッターの層(年齢・資格・子育て経験の有無)
- 利用料金
- 利用最低時間
- 予約方法
- 何日まで予約すればよいか
- 会員制の有無
- 月極利用の有無(待機児童になった際これを利用)
- キャンセル対応
- 病児の対応
- シッターの指名の可否
- シッター中のケガ・病気
- 災害時の対応
- 福利厚生としての割引制度
結構な数の項目を判断基準としていました。振り返れば、我ながらしっかり考えていたものです(笑)。
選んだ2所ですが、どちらも電話対応が丁寧で、代表者が1時間かけてじっくり説明をしてくれました。また、その日のうちに契約を勧められなかったのも決め手となりました。
厚生労働省の留意点2.で、「(事前に)必ずベビーシッターと面会」とありますが、どの事業所も複数のベビーシッターが登録しているので、面接の際に会ったベビーシッターが保育をしてくれるとは限りません。担当のベビーシッターが確定するのは、概ね前日でした(理想と現実の差として、覚えていただければ幸いです)。
もう一つ、筆者が重要視したのは、「病児を預かってくれるか」ということ。どちらも会員であれば預かる、ということでした。子どもの体調に関わることなので、「一見(いちげん)さん」は受け付けないのも納得です。また、ベビーシッターの指名は可能でしたが、多くの人と関わって欲しいので敢えて行いませんでした。
まとめ 〜 ベビーシッターも選択肢に!
筆者は実家が遠方のため、実家の支援を受けられず、様々な利用方法で実際利用して本当に助かりました。
ベビーシッターが子育ての選択肢として根付き、ママたちが安心して働けるようになって欲しいと思います。