2020年東京都の待機児童数は減少、保活には影響する?

2020年東京都の待機児童数は減少、保活には影響する?

2020年の東京都の待機児童数は、2019年と比べて1,347人減少し2,343人となりました(4月1日時点で比較)。2,000人台になったのは、1990年以来30年振りです。これで「保活」も少しは楽になったかもしれませんが、数字には現れない隠れた待機児童も存在しており、まだまだ“完全解決”は程遠い状況です。(ライター・松原夏穂)

東京都の待機児童数は大幅減!

まずは、東京都全体の待機児童数の推移を見ていきます。

東京都の待機児童数の推移

待機児童数 対前年増減
2015年(平成27年)
7,814人
-858人
2016年(平成28年)
8,466人
+652人
2017年(平成29年)
8,536人
+120人
2018年(平成30年)
5,414人
-3,172人
2019年(平成31年)
3,690人
-1,724人
2020年(令和2年)
2,343人
-1,347人

出所:東京都福祉保健局少子社会対策部保育支援課「表3 保育所等利用待機児童等の状況 (1)保育所等利用待機児童数の推移」より、一部抜粋

表によると、待機児童数は確かに減少しています。

背景には、保育サービスの施設数や定員数の増加があります。認可保育園の設置数と定員は、2015年の2,184所(21万6,699人)から、2020年には3,325所(30万3,093人)に増加しています。定員は、5年で約1.5倍になったことになります。

認可保育園と認可外保育園を合わせた保育サービスの利用児童数(注)も、2015年の24万7,513人から、2020年には32万0,558人に増加しました。

(注)認可保育所、認証保育所、認定こども園、家庭的保育事業等の地域型保育事業、定期利用保育事業、企業主導型保育事業、区市町村単独保育施策等の利用児童数合計、出所:東京都福祉保健局少子社会対策部保育支援課「表1保育サービス利用児童数の状況、表2保育所等の設置状況」

23区では、世田谷区が待機児童ゼロに!

さらに区単位で見ていきましょう。23区の待機児童については、2019年に比べて1,048人減少して、989人となりました。ほぼ半減したことになります。

特に、千代田区、港区、目黒区、世田谷区、杉並区、豊島区の6区が待機児童ゼロとなりました。常に待機児童が多かった世田谷区は、470人からゼロへと大きく減少させています。このうち、港区と杉並区は前年2019年も待機児童ゼロを達成していました。

東京都23区の待機児童数の推移

 

区市町村名 待機児童数 待機児童数の増減(前年度比) 就学前児童人口
千代田区
0人
-4人
3,831人
中央区
202人
+5人
11,279人
港区
0人
0人
16,034人
新宿区
1人
-1人
13,142人
文京区
11人
-35人
12,066人
台東区
60人
-19人
7,858人
墨田区
97人
+14人
12,485人
江東区
14人
-37人
26,193人
品川区
13人
+1人
21,055人
目黒区
0人
-79人
13,366人
大田区
35人
-81人
32,088人
世田谷区
0人
-470人
43,398人
渋谷区
58人
-34人
10,874人
中野区
73人
-84人
13,106人
杉並区
0人
0人
25,520人
豊島区
0人
-16人
10,913人
北区
79人
-40人
15,527人
荒川区
28人
-17人
9,665人
板橋区
80人
-28人
24,488人
練馬区
11人
-3人
34,631人
足立区
3人
-120人
28,456人
葛飾区
21人
-33人
20,170人
江戸川区
203人
+33人
32,844人
23区合計
989人
-1,048人
438,989人
東京都合計
2,343人
-1,347人
632,104人

出所:東京都福祉保健局少子社会対策部保育支援課「表4 区市町村別の状況」

このデータからは、保育の需要に応えて、待機児童数は解消に向かっているように見えます。

知っておきたい、厚生労働省の「待機児童の定義」

待機児童の以前の定義は「認可保育園に入所を申し込んで、入所不可となった子ども」という単純なものでした。しかし、2001(平成13)年以降、定義が度々変更。

待機児童が社会問題化する中で、厚生労働省は2016(平成28)年に、全国統一の待機児童基準をまとめました。それまでの待機児童の基準よりは対象を拡大したものの、すべての待機児童をカバーしているわけではありません。「保育所等利用待機児童の定義」の中で、以下のようなケースでも、待機児童の対象外としてしまっています。

待機児童の対象外とするケース

ア、保護者が求職活動を停止した場合

イ、認可外保育園(認証含む)、預かり保育を利用した幼稚園、保育室・家庭的保育事業、企業主導型保育事業、に通っている児童

ウ、現在児童が保育施設に通っているが、第一希望でないため転園希望を出している場合

エ、産休、育休明けの利用を希望として、事前に利用申し込みが出ている「利用予約」

オ、利用可能な保育施設があるにも関わらず、特定の保育園等を希望し、保護者の私的な理由により待機している場合(開所時間が保護者の需要に応えている。登園時間が自宅から20~30分未満)

カ、保護者が育児休業中

出所:厚生労働省の「保育所等利用待機児童の定義」を参考に作成

「待機児童」という場合、「保育園に入所を申し込んで、入所不可となった子ども」と考えがちですが、実際は、以上のケースを差し引いたものが「待機児童数」ですから、人数が少ないのも当然です。

例えば、就職活動のために面接に行きたいとしても、子どもを預ける先がないために、やむを得ず求職活動を停止する場合もありますが、それは待機児童に含まれません。

また、兄弟を同じ施設に入れたいのは、親なら当然思うこと。そのために、転園の希望や待機することが「私的」理由とみなされるのは残念でなりません。

隠れ待機児童数の実態は?

それでは、待機児童の対象外となった子ども達はどのくらいいるのでしょうか?

日本共産党東京都議会議員団は、厚生労働省の待機児童の定義から外れた「隠れ待機児童」数を調査しました。東京都の合計は16,279人(大田区、渋谷区、三鷹市、小平市、東大和市、多摩市、西東京市は調査結果なし)。なんと、厚生労働省の待機児童の約7倍の人数でした。
この中から、前述の厚生労働省基準では待機児童ゼロの6区について、「隠れ待機児童数」を見てみましょう。

隠れ待機児童数(2020年)

自治体名 隠れ待機児童数
千代田区
86人
港区
2,046人
目黒区
1,036人
世田谷区
1,367人
杉並区
1,160人
豊島区
199人

最も多い港区は、23区で隠れ待機児童数上位になりました(大田区、渋谷区は調査結果なしのためカット)。

次に内訳を見ていきます。

待機児童ゼロの6区について、「隠れ待機児童数」の内訳

地方単独保育施策(認証保育園など)を利用している子ども
3392人
「特定の保育園等を希望している」とされている子ども
1429人
保護者が育児休業中の子ども
914人
企業主導型保育事業を利用している子ども
85人
一時預かり事業(幼稚園型Ⅰ・Ⅱ)または預かり保育の補助を受けている幼稚園を利用している子ども
46人
保護者が求職活動を休止している子ども
28人

※当該自治体に「認可化移行運営費支援事業を利用している子ども」「幼稚園における長時間預かり保育運営費支援事業を利用している子ども」はゼロのため、省略。出所:日本共産党東京都議会議員団 待機児童数の調査結果について 2020年6月11日「別表1 区市町村ごとの待機児童の状況」より一部抜粋

この表では「地方単独保育施策(認証保育園など)を利用している子ども」が最多で、都全体でも最多の39%を占めます。

認可保育園の入所が不可となっても、認証保育園などが子どもの受け皿の役割を果たしています。

それに続いて多いのが以下のケースです。
「『特定の保育園等を希望している』とされている子ども」
「保護者が育児休業中の子ども」
気になるのは「『特定の保育園等を希望している』とされている子ども」も多いこと。様々な理由から、紹介された保育園は通園できないということもあります。都全体で36%を占めます。

重複しますが、親が働きやすく、子どもがストレスなく通える環境であることは大切です。「入所できればOK」ではないので、もう少し親子に寄り添った対策をしてほしいもの。

全国の待機児童数も減少

ここで東京都から離れて、他県に目を向けてみましょう。

2020年の待機児童数は12,439人で、前年比4,333人の減少となりました。とはいえ、政府の目標では2020年に待機児童ゼロとするはずでしたので、目標は達成できていません。

待機児童のいる市区町村は、前年から42減少して400市区町村です。待機児童が100人以上の市区町村は、前年から18減少して22市区町村となりました。

待機児童が多い市町村は、以下のとおりです。東京都23区は積極的な保育園新設により、待機児童が大きく減少しましたが、他の県では、そこまで減少しませんでした。

待機児童数が多い市区町村(2020年)、カッコ内は対前年増減

1位=埼玉県・さいたま市 387人(▲6人)
2位=兵庫県・明石市 365人(▲47人)
3位=兵庫県・西宮市 345人(+92人)
4位=岡山県・岡山市 259人(▲94人)
5位=兵庫県・尼崎市 236人(+88人)
6位=鹿児島県・鹿児島市 216人(+7人)
7位=東京都・江戸川区 203人(+33人)
8位=東京都・中央区 202人(+5人)
9位=千葉県・船橋市 197人(+125人)
10位=沖縄県・南風原町 194人(▲14人)

なお、待機児童ゼロの県が、全国にはいくつかあります。

待機児童ゼロだったのが、青森県、山形県、富山県、石川県、福井県、山梨県、岐阜県、鳥取県、島根県、長崎県、宮崎県です。

出所:厚生労働省「保育所等関連状況取りまとめ(令和2年4月1日)」

筆者の出身地である富山県を例に見ていきます。富山県は2004(平成16)年から、待機児童ゼロです。しかし地元の友人によると「希望の園に必ず入れるわけじゃないよ」とのこと。それでも以前は、妥協したら何かと預け先はあったようです。2018年になると富山市は、潜在待機児童数が190人と発表しました。「待機児童ゼロ」というのは、希望の保育園に入れるというわけではないのです。

北日本新聞によると、
「ある女性は希望の7園は全て満員で断られ、郊外で空きのある園を紹介されました。しかし、生活圏内から外れ利用しにくいため、入所にはいたりませんでした」
との報道もあります。

人数に違いはあるものの、都市部も地方も預ける親の悩みは共通です。

出所:北日本新聞 「潜在待機児童190人 富山市で今年4月時点」(2018年12月28日)

目黒区のママは、情報を集めて、保活に成功!

目黒区は、厚生労働省の基準では待機児童はゼロ。しかし、「隠れ待機児童数」は1,036人となっています。昨年までは、厚生労働省基準でも、多数の待機児童が発生していました。

目黒区に住んでおり、現在子供を保育園に通わせているAさん(母親)は、約2年前の保活の実感をこう話しています。

「私が保活をしたときママ友は、入園に利用される保育ポイントが比較的高めの人ばかりでしたが、皆、希望する保育園は落ちていました。『入所できたらラッキー』程度に考えていたようですが、それではだめなのでしょう」

このように、隠れ待機児童がいるということは、多くの人が、希望の保育園に入れていないということです。

Aさんは、夫婦共自営業で両親は地方(遠方)在住。子どもは現在、4歳。3か月から認可外保育園に預けて、1歳過ぎに第一希望の認可保育園に転園できました。自営業の場合、保育ポイントが低めに見られがちなので、預けるのは大変です。

「私のときは、自分と条件や状況の似ているママから、細かく話を聞いて諦めずに動いたことで、第一希望の保育園に入園できました。『動く』『区の担当者に伝える』『情報を制する』は、大事ですね」

仕事内容やどれだけの時間働き稼いでいるかを、目黒区の担当者に「伝える」ことが大事と感じたAさん。区役所に、通帳のコピーや仕事用ブログのコピー(働いている様子を見せる)、活動実績をまとめたものを提出しました。

確かに、会社員で両親の支援を受けられるママから話を聞いても、参考になりませんので、同じ状況の人と情報交換するのは重要ですね。

Aさんが保活をしたときよりも状況は改善されてはいますが、「隠れ待機児童」はまだゼロではありません。きちんと準備をして、保活に取り組むことが重要でしょう。

おわりに

今回「隠れ待機児童数」に驚きましたが、認可外保育園などを利用している子どもが大変多く、この点に関しては評価できます。前述の保活に成功したママも、以前は認可外保育園を利用していました。

保活の際はお住まいの地域の認可外保育園数や、どのくらい子どもが通っているのかも調べて、選択肢に取り入れてください。

とはいえ、「入所できればOK」ではないので、保育園まるごとランキングなどで、保育園情報にも目を向けておきたいものです。