新型コロナウイルスの感染拡大が、子どもたちと保護者の生活に大きな影響をもたらしている昨今。特に4月7日に発令された緊急事態宣言以降、保育園休園を決定した自治体もあるなど、これまで通りの生活ができないことが決定的となりました。また5月末までの緊急事態宣言の延長で、テレワークの長期化に対応した保育方法も求められています。そこで、保育園が休園している、または登園自粛要請が出ている自治体に住む保護者に、現状について話を聞きました。
自治体によって分かれる対応
新型コロナウイルスの感染拡大による緊急事態宣言以降、保育園を休園する自治体があります。
現時点(5月1日現在)で、東京23区で「保育園休園」となっているのは、以下のとおりです。
千代田区、中央区、文京区、渋谷区、目黒区、杉並区、世田谷区、豊島区、江東区、墨田区、足立区、中野区、荒川区
ただし、「保護者が社会機能を維持するために就業している世帯」などは、応急保育が可能となっています。
一方で、「自粛要請」となっている自治体はは、以下のとおりです。
北区、台東区、葛飾区、江戸川区、板橋区、練馬区、大田区、新宿区、港区、品川区
ただし、詳細に見ていくと、「通園できるのは、保護者が社会機能を維持するために就業している世帯」としている区もあり、実際には休園措置を取っている区と差異はないようです。
それでは、「休園」、または「自粛要請」となっている区の保育園を利用する保護者は、どのような対応を取っているのでしょうか。現状について話を聞きました。
「保育園休園」自治体の保護者の対応は?
4歳児ママ(航空会社勤務)のケース
私が勤務する会社は交代勤務となっており、出社人数を減らしています。出社日数は減ってはいるものの、業務内容的に業務時は必ず出社しなければなりません。
3月中旬頃、通園する保育園から「登園自粛要請」の通知がありましたが、その時点で自粛している世帯はほぼなかったように思います。保育園側も、「できれば、なるべく……」といった程度。ですが、緊急事態宣言後、状況は一変。有無も言わせず4月10日から休園となりました。
4月8日に園側から、「4月10日以降、応急保育を申し込む世帯は、今日中に申し込みを」と連絡がありました。その条件には、「医療従事者やインフラ業」とあり、わたしは該当しないので申し込みはしませんでした。
幸いにも夫がテレワークに切り替わっていたので、私の出社日は夫が家事・育児を担当し、それ以外は私が子どもを見ています。
ただ、5月末までこれを続けるとなると、ちょっと厳しいですよね。
テレワークと育児なんて、とてもじゃないけれど両立できない。夫はずっとテレビや動画を見せているそうで、それに不満があっても預けている以上、文句は言いにくい。子どもも思いきり遊びたいでしょうし、そろそろ家族中のストレスが爆発しそうです。
5歳児、2歳児ママ(銀行勤務)のケース
2人が通っている保育園は、4月10日から休園になってしまいました。夫は公務員のため通常通り出社しており、仕事を調整できるのはわたししかいません。そんなわたしに残された道は、「有休消化」しか残っていませんでした。
なので、いまは完全に仕事を休み子どもと過ごしていますが、ふと理不尽さを覚えることも。
だって、同じように保育園児の子どもを持つ同僚は、「登園自粛要請」の区に在住しているから、通常通り仕事をして子どもを保育園に預けることができている。
正直、「なぜわたしは、身を切って有給を使わなきゃならないの!?」と思う日もあります。ですが、「こういうときじゃないと有給は消化できないし!」と割り切っています。
そんなふうに割り切って子どもと過ごしていた矢先の4月末、わたしが住む区は「5月末までの休園延長」となりました。さすがに消化できる有給がなくなってきたので、会社に相談し、今後の対応を決める予定です。
小学生、4歳児ママ(自営業)のケース
フリーライターをしているため、以前からずっと在宅で仕事をしています。
緊急事態宣言後、各取引先とも休業などせず通常通りとのことで、わたしの仕事も通常通り。一方で夫が勤務する出版社は刊行数を減らしたとのことで、ゆるやかにテレワーク中です。
そんななか保育園休園が知らされました。応急保育の申し込みの条件に当てはまりませんでしたが、「業務量が一切変わっていない」ことを盾に申し込むと、園長からこう言われました。
「在宅で仕事をしているなら、家庭で子どもを見てほしい。テレワークのお母さんたちには、みんなそう伝えて断っている」
私、入園当初から在宅仕事ですが、それができるなら最初から保育園入れてないと思いますけど!?
園長に八つ当たりするわけじゃありませんが、今回のことで「在宅=育児しながら仕事ができる状況」という悪しき常識が作られてしまわないか、本当に心配でたまりません。
さて、園長にそう言われても、夫の出勤日とわたしの取材日や締め切り日が重なり、「どうしても誰も自宅で見ることができない2日間がある」と、なかば強引にお願いすると、ようやく「2日間だけなら」と応急保育を受け入れてくれました。
当日、一緒に応急保育を受けたのは、医療従事者2人、小売店勤務1人、介護業1人。条件に当てはまらなかったのは、見事に私だけでした……。
休園が5月末まで延長となりましたが、夫も通常業務に戻るとのことで、また園長に相談すると、「マスコミ勤務世帯の保育はできない」とピシャリ。
もう保育園は諦めるしかなく、家族全員が受給できる「特別定額給付金」で、シッターを雇う予定です。
さらにその際、「企業主導型ベビーシッター利用者支援事業(特例措置)」を使用して割引を適用しようと思っています。
0歳児、2歳児ママ(出版社を育児休業中)のケース
下の子が4月入園予定でしたが、保育園が休園に。と同時に、私の住む区が「育児休業が8月まで延長」を発表。さっそく延長を申し込み、会社からも8月復帰で了承を得ています。
同じ保育園になんと5人も育休ママがいるので、毎日のように公園に集まり、もはや保育園の園庭状態に(笑)。
一応はソーシャルディスタンスを心がけ密にならないよう過ごしていますが、当然こころよく思わない保護者がいるのも事実です。
ほかの育休ママが、うかつにもグループラインで「今日も公園にいます!」とお誘いラインを書き込んだら、ほかのママから、「いまは子どもの命を守るため、自粛すべき時期では?」とお叱りの声が……。
あとで公園に集まったママたちと、「そんなことわかってるよね!」なんて愚痴りましたが、良心が痛むのも事実。
とにかく早く、子どもたちが心置きなく遊べる日が来ることを願っています。
「自粛要請」自治体の保護者の対応は?
3歳児ママ(IT会社勤務)のケース
4月頭から、保育園から登園自粛要請が出ていて、「受け入れ態勢を縮小して開所」と通達がありました。私はテレワーク中ですが育児しながら仕事ができるわけもなく、“自粛要請”を言葉通り受け入れ、堂々と登園しています(笑)。
が、ある日、通園してびっくり!
80人ほど通園している園で、通園児がうちの子ひとりだったんです!
さすがに保育士さんに申し訳なく、気まずくなりました……。
一歩でその日、同保育園のママ友に聞くと、近所の大きな公園に遊びに行ったそうで、芋洗状態だったといいます。ちなみに公園と隣接する病院ではクラスターが発生していることもあり、私はその公園に行く気持ちにはなれませんが、多くの人たちは気にならないようです。
自粛要請に反してしっかり消毒&除菌しているノー密な保育園で保育を受けるうちと、保育園を自粛して3密状態の公園で遊ぶほかのうち……果たして子どもにとっていいのは、どちらなんでしょうか。日々、自問自答を繰り返しています。
会社の支援制度、自治体の助成などのチェックを
保育園や行政の状況、そして勤務状況により、さまざまなスタイルで現状を乗り切ろうとしている保護者たち。前例やマニュアルなどがないだけに、それぞれの苦労が垣間みえます。会社の制度や自治体の助成等などを漏れなく活用することで、苦難を乗り越えていきたいですよね。