「認可外保育園」は、認可保育園よりも死亡事故の割合が高いと言われています。なぜ、認可外保育園ではそうしたトラブルが起こるのでしょうか。これまであったトラブルをあげ、その原因を分析しました。(保育園まるごとランキング編集部)
認可外保育園の死亡事故、トラブルはなぜ起こるの? 代表的な事件も徹底分析
認可外保育園とは?
「認可外保育園」は、ベビーホテル、事業所内保育園、院内保育園、その他の認可外保育施設の4つに分類されています。そうした施設と「認可保育園」との大きな違いは、設置基準です。
内閣府が公表している<認可外保育園の質の確保・向上について>の「認可保育所と認可外保育所の設置基準」によると、職員の配置基準は以下のようになっています。
・認可保育園(以下・認可)の配置基準
認可保育園には、配置基準という、保育士の人数に関する規定があります。以下がその規定です。
0歳児3人につき保育士1人
1・2歳児6人につき保育士1人
3歳児20人につき保育士1人
4歳児以上は30人につき保育士1人
(職員は、全員が保育士資格を保有)
・認可外保育園の配置基準
一方で「認可外保育園」の規定は、以下の通りです。
主たる保育時間(11時間)=認可保育園と一緒
11時間を超える部分=常時2人以上の配置
(職員は、3分の1以上が保育士または看護師)
と、認可保育園よりも緩めに作られています。
施設の面積についても、認可保育園は、乳児室やほふく室、2歳児以上の保育室や屋外遊技場等、それぞれに細かく面積基準が設けられています。
一方、認可外保育園は、全年齢共通で、保育室1.65平方メートル/人、ほかには調理室とトイレがあればOKとされています。
このように認可外は、認可よりも設置基準がゆるやかであるといえます。
認可外保育園ではどんなトラブルがあるのか?
保育園では毎年のように、「死亡事故」「治療に要する期間が30日以上の負傷や疾病ををともなう重大事故」が起きています。重大事故には、人工呼吸器をつけることや、ICUに入る等の意識不明に陥る事故を含みます。
施設側が自治体に報告義務のある重大事故には、以下のような事例があげられます。
・園庭の一部で工事を実施中、園が「立ち入り禁止」等の危険防止策をおこたったため、工事箇所で園児が店頭し、額をぶつけて出血した。
・鉄棒で遊んでいる際、保育士が目を離した隙に鉄棒から落下した。
・登り棒を上まで登ったが、手を離して落下した。
死亡事故件数について、内閣府および厚生労働省が作成した資料によると、平成28年は認可保育園6件、認可外保育園7件とほぼ同数に見えます。ここで、利用している子供の数も計算に入れてみましょう。
利用児童1万人あたりの事故数を比べると、認可保育園0.02件に対して、認可外保育園は0.39件もあり、発生確率は20倍近くもあることが分かります。
さらに平成16年4月から平成29年12月までの死亡事故件数を集約したデータでは、認可59件に対し、認可外131件と、圧倒的な割合を認可外が占めていることがわかります。
そんな死亡事故がもっとも起きやすいのは睡眠中で、平成27年から平成29年までの死亡児童数21人中20人にのぼります。
死亡事故の原因と、実際に起きた死亡事故
では、一体なぜ睡眠中に死亡事故が起きやすいのでしょうか。
事故が起こった状況を分析すると、かねてから立ち入り調査が入っているような行政から目をつけられている認可外保育園で、職員の人数が少なく、職員が児童の監視を怠った隙に、就寝中の低月齢児が呼吸をしなくなった、というケースが目立つようです。
では、実際に東京都で起きた死亡事故を振り返ってみましょう。
事故は平成28年3月16日、昭和53年に開設した東京都大田区にある24時間運営の認可外保育園で起こりました。
当時、児童は5人、職員は保育士資格を持たない職員1人。職員は、19時30分に登園した6ヶ月の女児を20時にベビーベッドに仰向けに寝かせ、21時に女児が仰向けで起きているのを確認。22時と23時に、体を仰向けに顔を右に向けて眠るのを確認し、23時40分頃に「うーん」という声を聞いたので、職員は調理室でミルクを作り始めました。そして23時50分、ミルクをあげる前にオムツ変えをするため床に寝かせると、職員は女児の顔面が蒼白になっていることに気づきました。すぐに人工呼吸を行いましたが反応はなく、0時に119番通報。2時間後、搬送先の病院で死亡が確認されました。
その間、保護者には一切連絡がなく、0時頃に迎えにいった施設内にいた警察に言われてはじめて、自分の子どもが心肺停止で運ばれたことを知ることになりました。
さて、同園は東京都の立ち入り調査がたびたび入っていたことも分かりました。平成25年には立ち入り調査で指摘が入り、翌年は事前通告なしで調査。園長1人での保育を確認し、前年の未改善項目と共に指摘、改善を指導しました。さらに平成27年にも調査、指摘が入り、平成28年にも前年の指摘で改善された項目を確認しつつ、改善されていない項目について指摘を行いました。
事故を受けてもなお改善が認められなかった同園は、平成28年7月に廃園を決定、翌年3月末に事業者から廃止届が提出されるにいたりました。
認可外保育園は、立ち入り調査の有無の確認を
自治体で公表している認可外保育園の立ち入り調査については、認可外保育園を決める前に必ずチェックしたいところですが、実は立入調査に入った園名や、その指導内容について公表している自治体は1割も満たないことが、2019年1月の読売新聞の調査で判明しています。
保育園名と指導内容を公表しているのは、2019年1月時点で東京都、神奈川県、横浜市、川崎市、新潟市、広島市、福岡市、群馬県高崎市、東京都八王子市、兵庫県姫路市、松山市のみ。公表しない自治体は、その理由について、「人手不足で事務作業の余裕がない」「保育園の運営を妨げる」「保護者らの不安を煽る」「公表の必要性を感じない」などと回答したといいます。
また、児童福祉法などでは保育園へは年1回以上の立ち入り調査が原則として定められているものの、実際に行われているのは調査対象園の68%であることを背景に、「全園の立ち入り調査を行なっていないのにも関わらず、一部のみを公表するのは不公平」との理由をあげる自治体もあったようです。
認可外保育園を選ぶ際に重要な基準となる立入調査実態ですが、今後、公表する自治体が増えることを期待したいですね。
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