保育士経験を活かし、子ども中心のダンススタジオを運営~保育士の転職体験

保育士経験を活かし、子ども中心のダンススタジオを運営~保育士の転職体験

保育士は転職する人が多いといいますが、どんな体験をしているのでしょうか? 今回お話を伺ったのは中島智史さん。大学卒業後、プロのダンサーに。さらに子どもの指導のために保育士資格を取得し、保育士とダンサーを数年間両立。現在は、子ども中心のダンススタジオの運営に力を入れています。(ライター・松原夏穂)

大学時代~ダンスとの運命的な出会い

取材に当たり、中島さんのダンス動画を視聴した筆者。リズムに乗って軽やかに踊る姿に、感動! しかし、「子どものころはスポーツが苦手で体力もなく、性格も内向的で、中学ではいじめられっ子でした」(中島さん)と意外な過去が。

大学進学を機に東京へ。「何かを始めたい。新しく生まれ変わりたい」と思っていたころ、キャンパスで友だちが踊っているのを見て、「これだ!」とダンスを始めました。練習を重ねコンテストにも入賞し、ダンスにのめり込むように。

「楽しいのはもちろん、自分に自信を持ち前向きに生きられるようになりました」と、当時を振り返ります。

次第にダンスを仕事にしたいと思うようになりましたが、父親は猛反対。「25歳までに結果が出せなかったら、あきらめる」と約束して、大学卒業後はダンスの道に進みました。

子どものダンス

いつもパワフルなsatoshi(中島智史)さん。ラブボンズのインストラクター紹介より

プロのダンサーとして

ダンススタジオのインストラクターだけでなく、アーティストのバックダンサーや振付師としても活躍。テレビでのバックダンサーや、コンサートで数万人の前で踊った経験も。

そしてインストラクターとして大学生や社会人、シニアと幅広い年齢層を教えるようになったものの、子どもを教えるのだけは苦手意識があり、避けるようなっていました。

あるとき、知り合いのダンススタジオの発表会にゲストとして出演。出演していた子ども達の熱気に圧倒され、直感的に子どもを教えることに再挑戦しようと考えました。慣れるまで苦労しましたが、「こちらのやり方が悪いと子ども達はすぐ集中力が切れてしまい、成長度合いも著しくありません。逆にこちらの工夫次第で子ども達はすごい集中力を発揮し、吸収力も凄まじい。指導することの大切さ、奥深さに気付きました」

そして、「ダンスを通して子ども達が自分に自信を持ち、前向きに生きられるようになってほしい」と、以前の弱かった自分と重ね合わせて、子共たちに向き合うようになりました。

ダンサーが保育の世界へ

保育園でダンスを教える

高齢者施設で勤務していた姉から、レクリエーションでダンスの依頼を受けた中島さん。イスに座ってのダンスでしたが、入居者は楽しそうに体を動かしました。その様子を見た施設長から縁のある保育園でダンスを教えてほしいと依頼を受けました。

こうして保育時間内に、ダンスの時間を設けてもらうことになりました。子どもの指導に自信を持ち始めたころでしたが、保育園でのダンスはまた次元の違う世界。試行錯誤の連続でしたが、それでも子ども達は大喜び。

そしてそのまま空き時間に保育園で働いてみたらと、施設長から声を掛けられました。また、運命的に感じるものがあり、承諾。保育補助として早朝から子ども達のお昼寝まで働き、その後にダンスの仕事をするようになります。

ダンスの仕事は夜遅くまであるので、体力的にはしんどいものでした。しかし、「子どもへの知識と経験を増やしたい。そして、いつか自分のスタジオを持つための資金を集めたい」との思いで、2017年~2021年3月まで、保育士とダンサーを両立させました。

保育士資格を取得

保育補助として働くのと並行して、「子ども向け指導者の資格はいろいろあるけど、国家資格の保育士が一番説得力がある」と思い、社会人向けの保育専門学校に通い、2018年度末に保育士資格を取得。

「いかにもダンサー、な服装で通ったから、不思議に思われたかも」と笑いながら答える、中島さん。

男性の生徒は少なかったけど、不安はありませんでした。それよりも、新しいことを学べるという、ワクワクした気持ちが大きかったとのことです。

保育現場で働いて感じたこと

保育士として働いて良かったことはとたずねると、「子どもとの接し方がより丁寧になり、愛情が深みを増しました。また子どもの心の掴み方も上手くなり、それがダンスの指導にも活かされました」といいます。

一方で大変だったことは、「体力勝負で休憩もほぼないこと。子ども達全体を見ないといけないので、常に気を張っている感じでした」としています。

男性保育士特有の悩みも。

男性というだけで嫌がって泣いてしまう子どもがいて、そんなときに限って自分しかいないときの対応に悩みました

またダンサーとしての葛藤も。周りのダンサー友だちの活躍を横目に見つつ、保育園に出勤。

自分はこれでいいのか? と迷いもありました。その度に自分がなぜ保育士になったのか、なぜここで働いているのか原点に立ち返りました。
子ども達とその家族が笑顔になれるように、「ダンスをすれば幸せに生きていけるんだよ」と1人でも多くの子どもに伝えていくことが、自分の使命だと思うようになりました

念願のダンススタジオをオープン

地元の公民館やスポーツクラブで教えているうちに、生徒がどんどん増えていきました。この頃には子どもの指導に力を入れていたので、子ども中心のスタジオを作ることを決意。2020年3月に動き出したものの、ほどなく戦後初の緊急事態宣言。

4月29日GWに合わせてのオープンを予定していましたが、延期に。7月にようやくオープン(取材時は、1周年を迎えたばかり)紆余曲折はありましたが、1年目の目標会員を無事到達しました。

昭島市のキッズダンススクール&レンタルスタジオ ラブボンズ

子どもへの指導で心掛けていること

中島さんのスタジオで教えるのは、人気のHipHopなど。でも、いきなり振り付けを教えたりはしません。

『遊びの延長』であることを大切に、音楽をかけながら模倣や真似っこなどの身体遊びをしています

通常ダンススタジオの壁一面には鏡があり、講師が鏡に向かって立ち、その後ろに生徒が立つという教え方ですが。「それだけではなく、子どもの様子を見ながら、対面で向き合ったり輪になったりと、常にコミュニケーションが取れる立ち位置を臨機応変に考えています」とのこと。

今後の展望

今後の展望について伺いました。

東京都多摩地区で最大級のダンススタジオを目指し、規模を広げていきたい
子ども達の様々なニーズに応じつつ、誰でも始められるくらい敷居は低いけど、レベルの高いスタジオでありたい
子どもに特化した、ダンスのインストラクターを育てていきたい。そして、ダンスを通じて幸せな子ども達が増えるとうれしい

と様々な夢を持っています。

メッセージ

様々な立場の保育士に向けて、中島さんからメッセージをいただきました。

中途で保育士になった方には、

他の仕事を経験して中途で保育士になった人の方が、すぐに辞めやすいイメージがあります。挫折しないために、自分は何のために保育士になったのか、なぜ保育士をしたいのかを、常に明確にしてください

男性保育士に向けては、

男性というだけで、不利なこともあります。今はジェンダーフリーな時代になってきましたが、男性だという偏見はあると思います。そこを念頭に置きつつ、自分にできることは何なのか、めげずに考え続けてほしいです

保育と他の仕事を両立している保育士には、

今の時代は、保育と他業種の両立も良いと思います。ただ中途半端にならないように、1つの仕事で生きている人よりも2倍頑張る必要があると思います

踊っている中島さんも、子ども達について語る中島さんもどちらも目が輝いていました。ダンスが大好きで、人を幸せにできるものだと確信されているのでしょう。子どもの習い事として定着したダンスですが、良さがさらに広まるといいですね。

東京都昭島市にある中島さんのダンススタジオ、LOVE BONDS(ラブボンズ)のwebサイトはこちら。下記は、LINE公式アカウント。

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