コロナ禍でも認可外保育園に保育料日割り返還を。子どもの行き場所は守るべき!

コロナ禍でも認可外保育園に保育料日割り返還を。子どもの行き場所は守るべき!

新型コロナウイルス感染の影響で、多くの保育園が登園自粛を余儀なくされています。認可保育園は、公費が適用されますが、認可外保育園は公費が適用されず、預けてもいないのに保育料を徴収されるという事態も発生しています。(ライター・松原夏穂)

コロナ禍でも認可外保育園は支援の対象外!?

東京新聞によると、横浜市のある「認可外」保育園は、2020年4月上旬市内の認可保育園と歩調を合わせて、利用者に登園自粛を要請し、その後「自主判断」で休園をしました。

実は、横浜市は認可外保育園に対しては、登園自粛要請をしていません。あくまで、「自主判断による登園自粛、休園」なのです。横浜市から見れば、言葉は悪いですが「勝手に休園した」ということになります。

元々、認可保育園には、自治体からの公費が手厚く支給されます。利用者が減っても、今回のように自治体方針に基づいた対応(この場合、「登園自粛」)ならば、人件費や家賃などは公費で支給されます。結果、運営には深刻な影響は出ません。現場で働く職員は、心身共に大変ですが、お金の面は保護されています。

対して、基本的には認可外保育園は公費が十分に下りません。また、使い道も園児の健康診断費用などに限定されています。つまり、家賃、人件費などの固定費は、登園自粛しようが払わなければなりません。日々の利用状況が運営に直結するのです。

上記の財政状況と、医療従事者などの保護者からの開園の要望を受け、この認可外保育園はゴールデンウィーク明けから「どうしても保育の必要な子どもに限り預かる」と方針を変更しました。

このような状況から、横浜保育室・無認可保育所連絡協議会は、5月1日、各施設が運営を続けられるように財政支援を求める要望書を市に提出したとのことです。

参考記事:東京新聞 「休園続けば収入ゼロ 認可外保育 運営の危機」(2020年5月2日付)

認可外保育園に支援を行う自治体も

保育園の存続という問題もありますが、一方で、保護者は、休園自粛をしたところで、保育料を払い続けるというケースもあります。保育料が日割り計算できないので、預けるのが1日でも、1ヶ月分を支払わなければならないというケースもあります。

こうした事態を、厚生労働省はどう考えているのでしょうか。見解を尋ねたところ、「お住まいの自治体に確認してください」とのこと。今度は自治体にたずねると「厚生労働省など上の組織からバックアップがないので、こちらとしては何もできない」でした。

認可外保育園は、事業者と利用者との直接契約だからこのような対応になるのでしょう。

参考までに、認可保育園の現状と比較してみましょう。都内の認可保育園長のコメントです。

「行政が早い段階で保育料を日割りにしますと言ってくれたこともあり、4月の段階でかなりの保護者が協力してくれて助かっています。5月の利用申し込みは、1歳児のほとんどは育休の延長で0人。2歳児以上は、16人中多くて10人ほどで、2人の日もあります。認可外保育園は、運営する側の気持ちも分かりますが、預ける側も保育料は安くない分辛いですよね」 

認可外保育園と比べて、対応に差があります。

このような状況で、認可外保育園に対し支援を行う自治体もあります。

【以下は、東京都で、認可外保育園も支援する主な自治体です】

・葛飾区 認証保育園に支援
・江東区 認証保育園に支援
・品川区 認証保育園に支援
・渋谷区 認可保育園等を通常利用している家庭が、休日に認可外保育園を利用した際の支援(日祝・年末年始に、新型コロナウイルス感染予防による臨時休園が追加)
・世田谷区 認証保育園、保育室、保育ママ、無認可保育園(原文ママ)に支援(0~2歳児)
・千代田区 認証保育園に支援
・練馬区 認証保育園、企業主導型保育施設を支援
・西東京市 認証保育所に支援

【以下は、千葉県で支援している主な自治体です】

・千葉県市川市 認可外保育園を支援
・千葉県習志野市 認可外保育園を支援
・千葉県船橋市 認可外保育園を支援

自治体によって温度差がありますが、一部の自治体は、なんとか保護者や子ども達に寄り添う姿勢を見せようとしています。

認可外保育園に返金・補償を求める動きも

こうした状況で、

「認可外保育園にも返金する仕組みを導入しよう」
「自治体は認可外保育園も補償対象にすべきだ」

と求める動きも出てきています。

4月中旬からは、認可外保育園を利用する保護者が中心となって、インターネット上で署名活動を始めています。オンライン署名などを集めるサイト「change.org」では、「コロナ自粛要請による全国の認可外保育料問題」についての署名を募集しており、5月26日時点で674人の賛同を得ています。

参考サイト:コロナ自粛要請による全国の認可外保育料問題(オンライン署名などを集めるサイト「change.org」より)

この署名活動を受けて、5月4日には立憲民主党の枝野幸男代表と党の「子ども・子育てプロジェクトチーム」事務局長の早稲田夕季衆議院議員、山本まさの埼玉県議会議員から、署名活動メンバーが、オンラインでヒアリングを受けています。

参考サイト:立憲民主党 「認可外保育園にも、保育料の日割り返還の仕組みを」。

現状、認可外保育園利用家庭の中には、登園をしていないのに保育料を払い続けている場合もあります。このままでは、保護者も保育園も共倒れになり、子ども達が行き場を失う危険性もあります。

このヒアリングの中でも、以下のような悲痛な声が上がっています。

「緊急事態宣言後、勤務先の店舗は休業。夫は観光産業の会社につとめているので、いつクビを切られるかヒヤヒヤしています。そうした中、認可外保育園では登園自粛しても保育料の返還がありません。月の保育料約66,000円のうち37,000円は幼保無償化の補助がありますが残りを払っています」

「4月は2日間しか登園していませんが、月の保育料約66,000円を払いました。わが家は幼保無償化の対象外なので、全額です。コロナウイルスの影響で夫の収入はほぼゼロになってしまいました。こんな状況で保育料を支払い続ける余裕はなく、退園も考えています」

「認可外保育園に通っているのは裕福な家庭と思われがちですが、認可に入れなかったために所得が高くない家庭も通っているケースもあります」
(すべて、上記の立憲民主党のサイトより引用)

幼保無償化で、認可外保育園に通う家庭にも補助が出ました。しかし補助が出るから安心と思って入園させたものの、ここで思わぬ壁に突き当たっています。

すべての保護者も子ども達も守られるべき

このように当事者でないと分からない問題は多くあります。ですから、このように声を上げたママ達を尊敬します。

子どもや保護者には、何の違いも罪もありません。国や自治体は、支援できる仕組みを整えるべきではないでしょうか。

前述の早稲田夕季議員はヒアリングを受けて、2020年5月11日に「認可外保育所等の登園自粛・臨時休園に伴う保育料減免への支援の必要性」について質問主意書で要望。5月12日内閣府より、認可外保育園の1つである企業主導型保育園が、臨時休園などによる保育料の減額分が助成対象とする通知が出ました。

早稲田夕季氏は5月13日のTwitterで、「残るは#認可外保育所」と記しました。
参考資料:早稲田夕季氏Twitter(@waseda_yuki)

1人でも多くの人が認可外保育園の現状を知り、対応が改善されることが望ましいですね。
※すべて、2020年5月26日現在の状況です。