2022年東京都の待機児童数は減少、保活には影響する?

2022年東京都の待機児童数は減少、保活には影響する?

2022年の東京都の待機児童数は、2021年より669人減少して300人となりました(4月1日時点で比較)。「保活」には影響するのでしょうか?(ライター・松原夏穂)

東京都の待機児童数は大幅減!

まずは、東京都全体の待機児童数の推移を見ていきます。

東京都の待機児童数の推移

待機児童数 対前年増減
2016年(平成28年)
8,466人
+652人
2017年(平成29年)
8,586人
+120人
2018年(平成30年)
5,414人
-3,172人
2019年(平成31年)
3,690人
-1,724人
2020年(令和2年)
2,343人
-1,347人
2021年(令和3年)
969人
-1,374人
2022年(令和4年)
300人
-669人

出所:東京都福祉保健局少子社会対策部保育支援課「表3 保育所等利用待機児童等の状況 (1)保育所等利用待機児童数の推移」より、一部抜粋

表によると、待機児童数は確かに減少しています。

背景には、保育サービスの施設数や定員数の増加があります。認可保育園の設置数と定員は、2016年の2,342所(23万334人)から、2022年には3,569所(31万9,510人)に増加しています。定員は、6年で約1.4倍になりました。

認可保育園と認可外保育園を合わせた保育サービスの利用児童数(注)も、2016年の26万1,705人から、2022年には32万3,879人に増加しました。

(注)認可保育所、認証保育所、認定こども園、家庭的保育事業等の地域型保育事業、定期利用保育事業、企業主導型保育事業、区市町村単独保育施策等の利用児童数合計、出所:東京都福祉保健局少子社会対策部保育支援課「表1保育サービス利用児童数の状況、表2保育所等の設置状況」

23区では、18区が待機児童ゼロに!

さらに区単位で見ていきましょう。23区の待機児童については、2021年に比べて、256人減少して、32人となりました。

特に、千代田区、中央区、港区、新宿区、江東区、品川区、目黒区、大田区、世田谷区、渋谷区、中野区、杉並区、豊島区、荒川区、板橋区、練馬区、葛飾区、江戸川区の18区が待機児童ゼロとなりました。このうち、千代田区、港区、新宿区、目黒区、大田区、世田谷区、渋谷区、杉並区、豊島区、練馬区、葛飾区の11区は、2021年も待機児童ゼロを達成していました。

東京都23区の待機児童数の推移

区市町村名 待機児童数 待機児童数の増減(前年度比) 就学前児童人口
千代田区
0人
0人
3,645人
中央区
0人
-85人
10,724人
港区
0人
0人
14,765人
新宿区
0人
0人
12,562人
文京区
2人
1人
11,839人
台東区
6人
-9人
7,382人
墨田区
7人
-22人
11,735人
江東区
0人
-4人
25,065人
品川区
0人
-5人
20,535人
目黒区
0人
0人
12,424人
大田区
0人
0人
30,083人
世田谷区
0人
0人
40,449人
渋谷区
0人
0人
10,332人
中野区
0人
-25人
12,710人
杉並区
0人
0人
24,518人
豊島区
0人
0人
10,375人
北区
16人
-2人
14,857人
荒川区
0人
-21人
9,076人
板橋区
0人
-36人
22,559人
練馬区
0人
0人
32,891人
足立区
1人
1人
26,178人
葛飾区
0人
0人
18,746人
江戸川区
0人
-49人
29,811人
23区合計
32人
-256人
413,261人
東京都合計
300人
-669人
595,119人

出所:東京都福祉保健局少子社会対策部保育支援課「表4 区市町村別の状況」

データによると、23区すべてと、小笠原村と三宅村を除く市町村で、待機児童が減少。さらに、就学前児童人口は、前年2021年の619,296人から595,119人と24,177人減少。コロナ禍で、保育園に子供を預ける人が減少しました。この結果、待機期児童数は、解消に向かっているように見えます。 減少の一因について、東京都関係者によると、「保育所の整備が進み、定員が増えたこと。コロナ禍で入園を先送りにする家庭もあったことが、考えられます。特に0歳児の利用は減っています。来年度以降、反動で申し込みが増える可能性もないとはいえない」とのことです。

知っておきたい、厚生労働省の「待機児童の定義」

待機児童の以前の定義は「認可保育園に入所を申し込んで、入所不可となった子ども」という単純なものでした。しかし、2001(平成13)年以降、定義が度々変更。

待機児童が社会問題化する中で、厚生労働省は2016(平成28)年に、全国統一の待機児童基準をまとめました。それまでの待機児童の基準よりは対象を拡大したものの、すべての待機児童をカバーしているわけではありません。「保育所等利用待機児童の定義」の中で、以下のようなケースでも、待機児童の対象外としてしまっています。

待機児童の対象外とするケース

ア、保護者が求職活動を停止した場合
イ、認可外保育園(認証含む)、預かり保育を利用した幼稚園、保育室・家庭的保育事業、企業主導型保育事業、に通っている児童
ウ、現在児童が保育施設に通っているが、第一希望でないため転園希望を出している場合
エ、産休、育休明けの利用を希望として、事前に利用申し込みが出ている「利用予約」
オ、利用可能な保育施設があるにも関わらず、特定の保育園等を希望し、保護者の私的な理由により待機している場合(開所時間が保護者の需要に応えている。登園時間が自宅から20~30分未満)
カ、保護者が育児休業中

出所:厚生労働省の「保育所等利用待機児童の定義」を参考に作成

「待機児童」という場合、「保育園に入所を申し込んで、入所不可となった子ども」と考えがちですが、実際は、以上のケースを差し引いたものが「待機児童数」ですから、人数が少ないのも当然です。

例えば、就職活動のために面接に行きたいとしても、子どもを預ける先がないために、やむを得ず求職活動を停止する場合もありますが、それは待機児童に含まれません。

また、兄弟を同じ施設に入れたいのは、親なら当然思うこと。そのために、転園の希望や待機することが「私的」理由とみなされるのは残念でなりません。

隠れ待機児童数の実態は?

それでは、待機児童の対象外となった子ども達はどのくらいいるのでしょうか?

以下は、厚生労働省が毎年発表している、いわゆる「隠れ待機児童」の推移です。2022年4月は、6万1283人もの「隠れ待機児童」がいたことがわかります。そして、その数はまだまだ高止まりしています。

「隠れ待機児童」はまだ高止まりしている(令和4年4月現在)

自治体名 隠れ待機児童数
2017年(平成29年)4月
69,224人
2018年(平成30年)4月
67,899人
2019年(平成31年)4月
73,927人
2020年(令和2年)4月
74,840人
2021年(令和3年)4月
63,581人
2022年(令和4年)4月
61,283人

次に内訳を見ていきます。

「隠れ待機児童」の内訳で最も多いのは、「特定の保育園のみ希望」(令和4年4月)

育児休業中
15,199人
特定の保育園等のみ希望
35,656人
地方単独事業(認証、小規模保育など)を利用
6,199人
求職活動を休止
4,229人
合計
61,283人
令和3年度比
▲ 2,298人

※出所:厚生労働省「(参考)保育所等利用待機児童数調査における除外4類型について②」

この表では「特定の保育園等のみ希望」が最も多く、3万5656人います。希望した保育園に入れず、自治体が紹介した保育園は断ったというケースです。これは待機児童には含まれません。

「第一希望の保育園以外には行きたくない、わがままな人では?」などと言われることもありますが、実際には「紹介された保育園が遠隔地で通えない」という理由や、「兄弟で違う保育園になってしまって送り迎えが非常に大変」などの理由で、自治体から紹介された保育園を仕方なく断ることもあります。

こうしたケースも待機児童に含まれており、待機児童がゼロ人になったからといって、「希望の認可保育園に必ず入れる」というわけではないのです。親が働きやすく、子どもがストレスなく通える環境であることは大切です。「入所できればOK」ではないので、もう少し親子に寄り添った対策をしてほしいものです。

ちなみに、この統計では、他の利用可能な保育園を紹介する場合は、「立地条件が登園するのに無理がない(例えば、通常の交通手段により、自宅から20~30分未満で登園可能)」保育園を紹介するものとし、それよりも遠い保育園を紹介して断った場合は「待機児童に含める」という運用を行っています。とはいえ、様々な事情をすべて汲み取ることはできず、待機児童問題まだ解決しているとはいえないのです。

全国の待機児童数も減少

ここで東京都から離れて、他県に目を向けてみましょう。

2022年度の待機児童数は2,944人で、前年比2,690人の減少となりました。調査開始以来、最少人数ですが、政府の目標では2020年に待機児童ゼロとするはずでしたので、目標は達成できていません。

待機児童のいる市区町村は、前年から60減少して252市区町村です。待機児童が100人以上の市区町村は、前年から1減少して3市となりました。

待機児童が多い市町村は、以下のとおりです。東京都23区は積極的な保育園新設により、待機児童が大きく減少し、他の県でも大きな減少が見られました。

待機児童数が多い市区町村(2022年)、カッコ内は対前年増減

1位、鹿児島県鹿児島市136人(+54人)
2位、千葉県八千代市119人(+71人)
3位、兵庫県明石市100人(▲49人)
4位、兵庫県尼崎市76人(▲42人)
5位、東京都町田市75人(▲1人)
6位、沖縄県糸満市67人(+55人)
7位、沖縄県南城市64人(+19人)
8位、沖縄県名護市52人(▲13人)
8位、兵庫県西宮市52人(▲130人)
10位、神奈川県座間市50人(▲9人)

なお、待機児童ゼロの県が、全国には14県あります。

待機児童ゼロだったのが、青森県、山形県、新潟県、富山県、石川県、福井県、山梨県、岐阜県、鳥取県、島根県、徳島県、長崎県、大分県、宮崎県です。

出所:厚生労働省「保育所等関連状況取りまとめ(令和4年4月1日)」

筆者の出身地である富山県を例に見ていきます。富山県は2004(平成16)年から、待機児童ゼロです。しかし地元の友人によると「希望の園に必ず入れるわけじゃないよ」とのこと。それでも以前は、妥協したら何かと預け先はあったようです。 朝日新聞の、「待機児童問題『見える化』プロジェクト」は全国の隠れ待機児童数を発表していますが、富山市は196人(2018年)。理由のほとんどが、「特定の施設のみを希望」でした。「待機児童ゼロ」というのは、希望の保育園に入れるというわけではないのです。 参考:朝日新聞「待機児童問題『見える化』プロジェクト

都内で保活をしたママの声を聞いてみた

2020年度に、保活をしたママの声を紹介します。 2021年4月に、1歳児クラス入園を目指し、保活をしたAさん(母親)。

希望を出した保育園には、どこにも入れなかったので、育休を延長しました。1歳児クラスの空きは時々出るものの、すぐに埋まってしまうので、来年2021年4月2歳児クラス入園に向けて、再度保活を行う予定です。私の地域では、1歳児の4月入園が一番人気。次は、0歳児の4月入園です。2歳児の4月入園は、それほど難しくないようです

Aさんは育休を延長しているので、お子さんは待機児童の対象外。このような方もおられるので、希望の園に入るのは、まだまだ難しいようです。

おわりに

コロナ禍で育児休業を延長して、入園を先送りにする家庭があったり、保育所の整備が進んだりと、認可保育園の入園は以前ほど大変ではないのかもしれません。 ただ、地域によって実情は異なります。お住まいの自治体に、問い合わせてください。また保育園まるごとランキングで、保育園の「質」「評判」に関する情報にも目を向けてください。