保育士とヨガ講師のパラレルキャリア~保育士の転職体験

保育士とヨガ講師のパラレルキャリア~保育士の転職体験

保育士は転職する人が多いといいますが、どんな体験をしているのでしょうか?今回お話を伺ったのは尚美さん(31歳)。数園の保育園での勤務を経て、現在は正規職員として保育士をしながらヨガ講師としても活動中です。保育士資格、幼稚園教諭二種免許状、幼児体育指導員、ヨガ講師の資格をお持ちです。(ライター・松原夏穂)

資格があって一生続けられる仕事に就きたい

中学生のときに甥が生まれ、「小さな叔母」になった尚美さん。その時期に職場体験で、保育園へ。甥も含めて小さい子と関わる楽しさを感じました。

進路を考えたとき、資格があり一生続けられる仕事に就きたいと思いました。乳幼児と関わった経験や、身体を動かすことや歌うことが好きだったため、保育専門学校へ進学し保育士を目指しました。

子どもとヨガ

私立の幼稚園と私立保育園に勤務

専門学校卒業後、私立幼稚園へ就職。1年目で4歳児19名の担任になったものの、不安で大変な日々を送りました。

1年後、モンテッソーリ教育※を取り入れた私立認可保育園へ転職し、2歳児の担任になりました。

モンテッソーリ教育という保育の基盤があったので、保育士同士の考えがぶつかることが少なかったです。また遊びの中から五感を育てることを大切にしていたので、子ども達の学びは大きかったです

と、当時を懐かしむ尚美さん。

しかし、モンテッソーリ教育は教具と呼ばれる独自の教材を使うため、準備が多く多忙を極めていました。

※モンテッソーリ教育とは、子どもの「自己教育力」に基づいた教育法。

幼稚園1年、保育園2年と保育に関わり、多くを学んだものの、忙しすぎて「保育の仕事はもう辞めようかな」と考えるようになりました。

また、社会人1年目に先輩から「この業界は、残業や持ち帰り仕事は当たり前だよ」と言われたことに、違和感を覚えたことを思い出しました。他にも疑問に思うことがあり、2園経験したけれど、他の園はどうなのか知りたくなりました。その際、立場を変えて、担任ではなく保育補助の形で関わってみようと思いました。視野が狭くなるのは、嫌だったのです。

派遣保育士という働き方を知り、そこで働くことを考え私立保育園は2年で退職しました。

派遣保育として認証保育園に勤務

退職後「保育士 派遣」で検索し、保育士の人材派遣会社をいくつか見つけ、その中から、時給など条件に合う保育園を紹介している会社に登録。その後、株式会社立の認証保育園に就職しました。

この頃、海外で保育の仕事をしたいと思うようになり、アルバイトや勉強のため、自分の時間が自由に使いたかったのです

派遣保育士の場合、保育補助が多いのですが、尚美さんは担任を持つことに。しかし、事前に契約内容を決めていたので、書類作成や行事担当などは外してもらえました。

良い意味で、リラックスして働けました。他の保育士とも上手く交流できて『仲良く保育をする』大切さを実感しました。
それまでは、『保育を回すことに必死』だった自分に気付きました。
保育士を続けることに迷いが出たら、派遣保育士を経験するのも悪くないと思います

ちなみに。派遣会社に登録すると、一人ひとりに担当がつき、面接設定や条件交渉をしてくれます。さらに就職後トラブルがあった際は、担当を通して保育園に伝えることができます。「第三者」がいることで安心して勤務ができます。

公立保育園に勤務

認証保育園で、派遣保育士として勤務して2年。そろそろ海外で保育の仕事をしたいと考えていたころ、公立保育園に勤務している知り合いから、採用試験の受験を勧められました。これまで私立で働いていたから、公立も経験したいと受験したところ、無事合格。

私立と公立の保育園の違いをたずねると、

公立保育園の福利厚生が整っていることに驚きました。職員の配置人数も、しっかりしています。また、ベテラン保育士が多く、子どもへの関わり方や保育に適した環境作りなど多くを学びました

この園では0、1、4、5歳の担任になり、4年勤務することになります。

保育にヨガを取り入れる

子ども達にヨガを伝える

4歳児を担当していたころ、ヨガの雑誌でキッズヨガ講師養成講座のチラシを見つけた尚美さん。元々趣味でヨガを習っており、子どもにヨガを伝えることに、興味を持ち受講しました。ヨガは、子どもの心と体の成長に効果的だと感じ、伝えていきたいと思いました。

公務員は副業禁止ですが、園長の許可を取り「無償」の条件つきで土日などに、キッズヨガのイベントなどに関わりました。

合わせて、保育の一環で週1回4、5歳児にヨガを伝えました。

1回目のヨガは、「ライオンのポーズだよ『ガオーッ!』と叫んだら、私の声だけが響いていました…」と苦笑い。それでも続けていくうちに、子ども達には変化が見られました。

子ども達は、段々声が出るようになりました。それぞれが関わって遊べるようになり、けんかができるくらいになりました。友だちが困っていたら、手を貸す光景も見られました

と嬉しそうに語ります。

元々運動が苦手な子どもが多かったのですが、体を動かすことを楽しむようになり、運動会ではヨガのポーズを披露しました。

保育士にヨガを伝える

子どもにヨガを教えるのと並行して、「ほいくヨガ」と名付けて、保育士にヨガを伝えるようになりました。

保育者や保護者が心も体も柔軟である方が、子どもにより良い影響を与えると思ったのです

実際、尚美さんの想像以上に心も体も疲れている保育士が多く、ヨガを通して、セルフケアができるようになってほしいと思いました。特に、呼吸が浅いと心も体も負担がかかるので、嫌な気分のときは深呼吸をするようにということを伝えました。

参加した保育士からは、「体がスッキリした」「身体が柔らかくなり、あぐらができるようになった」「自分を内観できるようになった。イライラしている自分に気付けた」「ソリの合わない上司も許す気持ちが生まれた」と嬉しい声をいただくようになりました。

ヨガの活動に力を入れていくうちに、副業可能な園で働きたいと思い、4年で公立保育園を退職しました。

副業可能な保育園への転職

今度は、0~2歳児までの私立の小規模保育園へ。「ゆったり、アットホーム」というイメージを持っていましたが、小規模のため、人員も少なく慌ただしい日々。

しかし、これまでの経験がかわれ、主任に。1年勤務した後、同じ会社の系列園に勤務しここでも1年勤務。

2021年4月から、新設の私立認可保育園に主任として勤務し、立ち上げに関わります。「『これから』を作り上げるのが、楽しいです」とニッコリ。

メッセージ

今後も保育士を続けながら、キッズヨガとほいくヨガを広めていきたいです。将来的には、保育士を目指す学生に向けて、ヨガを伝えていきたいです。現場に出たとき、セルフケアができるように、そして「遊び」のバリエーションが広げられるように。

保育士の皆さんにメッセージも頂きました。

人生の選択肢は1つではないので、しんどいと感じたら環境を変えるのも、保育の仕事から離れるのも良いと思います。ただ、迷いがあれば、一度派遣保育士を経験して、違う角度から保育を見るのも良いと思います。私自身、派遣保育士を経験して自分が楽しくなる働き方を見つけられました。
また、保育士とヨガ講師、2つの仕事を両立することで視野が広がり、お互いの仕事の意識が高くなりました。副業を認めていない職場もありますが、交渉して副業を可能にしてもらった保育士もいます。やりたいことがあれば、あきらめないでほしいです

保育の現場を熟知した尚美さんのような方に、保育とヨガの橋渡していただけると、子ども達や、保育士がより快適に過ごせるのではないかと思います。

尚美さんのInstagram「ほいく&ヨガの先生なおみ