ジェンダーレス保育について私が考えること【小阪有花さん連載⑤】

ジェンダーレス保育について私が考えること【小阪有花さん連載⑤】

ここ数年前から、ジェンダーレスという言葉を多く耳にすることが増えました。それに付随し、保育業界でもジェンダーレス保育を意識する場所も増え、一人一人の意思や行動がますます尊重される時代になってきています。今回はジェンダーレス保育について、私が感じていることをお話しします。(子どもの心スペシャリスト・小阪有花)

ジェンダーレス保育とは?

ジェンダーフリーとは?

ジェンダーレスとは、男性と女性や男児や女児といったように、男性か女性かの二つの性における性別の境界線をなくそうとする考え方をいいます。

「男の子だから」「女の子だから」と、分けて考えるのではなく、一人の人間として関わっていくことでより個性豊かに育っていってくれるのだと思います。

性別の境界線をなくし、子どもと関わっていくジェンダーレス保育に私は賛成しています。しかし、賛成していても、男の子、女の子と分けて保育するということがあまりにも普通になっている日本では、しっかりと意識しないと無意識にわけて考えてしまうことが多々あります。

私も実際、保育中に「男の子は女の子に優しくしてあげるとかっこいいんだよ」とか、洋服を選んでいる女の子に「このスカートとかピンクのお花がたくさんついていて、女の子らしいんじゃない?」など、性別分けしている発言を無意識にしていることがあります。わざわざ男の子、女の子とつける必要はないのに、自然にでてきてしまうんですね。

何気ない発言なのですが、この無意識にでる発言の数々が、「僕は男の子だから」「私は女の子だから」と考えるような思考を作ってしまうのだと思います。

無意識のうちに、男女を色分けしている?

ジェンダーレスを否定的ではなくむしろ肯定的に考えるとしたら、色分けにも意識をむけるべきとも思います。

たとえば、工作をする際、男の子と女の子で色分けしてしまうことがあります。お絵かきの時間には、ピンクをたくさん使いたがる男の子に、「他の色も使ってみたら?」と提案する際、「この色とかどう?」と緑や青などすすめてしまうときがあります。もし、女の子がピンクをたくさんつかっていたら、「かわいいね。ピンクが好きなんだね。」と、ありのままの感想を伝えているだけかもしれません。

このように、よかれと思ったコミュニケーションの中で、気がつかない間に「男の子らしさ」「女の子らしさ」を振り分けてしまいます。

東京五輪のマスコットの色に違和感も

色分けでいえば、2020年東京オリンピックのマスコット、パラリンピックのマスコットは、それぞれ「青」「ピンク」です。男性、女性という区別は書いてありませんが、男女を連想させます。

東京オリンピック

世界には、2015年国連で開かれたサミットの中で世界のリーダーによって決まられた国際社会共通目標を示すSDGsと呼ばれる取り組みがあります。SDGsとは2030年までに世界が達成すべき17の目標を意味しているのですが、その中には「ジェンダー平等を実現しよう」という項目も含まれています。にも関わらず、「オリンピック・パラリンピックのキャラクターを青とピンクに分けて大々的に世界発進してしまうのはいかがなものなのだろうか?」という思いが頭をよぎります。

世界をかえる力をもっているのは、政治家だけではありません。アーティストやクリエイターなど創造者として活躍している方々も同じくらいの可能性を秘めていると思います。だからこそ、時代の流れとともに、子どもたちが自分の個性で悩むことがない世界を作る意識を高め、ジェンダーレスを意識するなら、色の区別にも意識をむけて欲しいと私は考えます。

考えすぎずに、ありのままの感性を尊重

このように、私たちはジェンダーレスに否定的な気持ちがなくとも、言葉や行動、選択によって無意識に社会的視点(ジェンダー的視点)でコミュニケーションをとってしまっています。今は、男の子が化粧をしてもスカートを連想させるファッションをしていても、「それかわいいね」と、性別ではなく、その技術やセンスに感動されたり、共感されたりするような、男女の境界線なくコミュニケーションをとれる世の中になりました。しかし、幼少期の子どもへの関わり方は、習慣によってすぐに変えられるものではありません。

ここまで、色々思うことを書いてきましたが、だからといってジェンダーレスを意識しすぎてしまうと、保育がしにくく自分を苦しめることになりかねません。なので、結局は、ジェンダーレス について細かく目をむけるよりも、個人の意思を尊重してあげる意識をもって、子どもらと関わることが大切だと思います。自分が理解できない感情を持つ子がいて、接し方に悩むことがあっても、無理に全部を理解しようと気張らず、ありのままの感性を見守ってあげる。色々語りましたが、これでいいのではないかと思います。

ジェンダーレス保育の視点からすれば、自分は無意識に社会的視点で子どもたちと関わっていたことに気づかされます。それは別に悪いことでもなく、時にはそれにより子どもたちに分かりやすく思いが伝わることもありました。しかし、これからの時代、子どもたちの未来の可能性を少しでも広げるために、自分の常識を一回考え直して、「ジェンダーレス 保育を意識する」ことは、子どもたちの未来をより大きく、のびのびと羽ばたくものできるものだと、私は考えています。

【小阪有花】2004年 ミスマガジンから芸能界へ。2009年に芸能引退後、保育コンサルを経て、2020年 総合制作会社cheer lead を設立。