わが子が登園・登校を嫌がったとき、親ができることは?~はぁもにぃ保育園園長の「保育園あるある日記」⑥

わが子が登園・登校を嫌がったとき、親ができることは?~はぁもにぃ保育園園長の「保育園あるある日記」⑥

わが子が登園・登校を嫌がったら、親としてどのように対応したらよいでしょうか?わが家の体験(子どもは小学生)を通して、私の考えをお伝えしたいと思います(はぁもにぃ保育園 園長 山下真由美)

「学校へ行きたくない」(イラスト はぁもにぃ保育園・栗林実花)

「学校へ行きたくない」(イラスト はぁもにぃ保育園・栗林実花)

わが子が登園・登校を嫌がった!そのときの親の気持ちは

今回お伝えしたのは、あくまで私の考えとわが家の一例です。参考としていただければ幸いです。

登園・登校に対する、30~40代の親の価値観

私たちの世代(30~40代)は、「保育園・幼稚園や小学校(いわゆる学校というもの)は毎日行くべきもの」という雰囲気の中で子ども時代を過ごしたため、親になってもその考えや価値観を持っている人が少なくありません(もちろんそれが間違っているとか、良くないということではありません)。それゆえ、子どもに「学校に行きたくない」と言われたときには、親である私たちが、戸惑ったり、子どもを質問攻めにしたり、ときには怒ったりしてしまいがち。

それが結果的に、子どもと良い関係性を築いていく妨げになるかもしれないということを、お伝えしたいと思います。

例えば、「お腹が痛い、熱がある」などの体調不良や、「いじめなどのお友だちとのトラブルや、先生とのコミュニケーションでうまくいかない」などの理由であれば、仕方ないと思えるかもしれません。

しかし、「勉強が難しい、〇〇をやるのは嫌だ」などの理由であれば、嫌なことから逃げようとしている、怠けようとしていると思って、叱咤激励したり、なだめすかしたりして、なんとか行かせようとしたりしませんか?

おまけに、「なんとなく行きたくない」なんていう、はっきりとした理由がないときは、「何で行きたくないの?!」とつい問い詰めてしまうことも。

そうなると、子どもは責められていると心を閉ざして、腹痛などを起こして拒否反応を示します。詰問が続くと、子どもは親に信頼されていないと感じ、「学校に行けないのは、ママのせいだ!」と思ってしまうこともあります。

親はなぜ、登園・登校をさせたいのか?

親はなぜ、そうまでして子どもを学校に行かせようとするのでしょうか。

正直、親自身が、子どもに学校に行ってもらわないと、自分の仕事ができないなど、物理的に困るからというのもあります。

「この子が今日休んだら、仕事にならない!!」
「あの人にこう言って、この人にこう言って」
「あの仕事は今日やらなくちゃいけないし、この会議は外せないし・・・」

こんなことを「休みたい」と言われた瞬間、考えるってことありますよね。

もちろん、自分の都合だけではなく、親として「1度行かなくていいよと言ってしまったら、2度と行かなくなるかもしれない」と許してしまった後のストーリーを、すごく考えてしまうことありませんか?

1日が2日になって、3日になって、1週間になって、1か月になって、1学期まるごと行かなくなるんじゃないか。最後には引きこもりになって、親の言うことも聞かなくなって、ゲームばっかりやるようになるんじゃないか。と、はてしなく不安になってしまうこともありますよね。

実際、私自身が初めてわが子から学校に行きたくないと言われたときに、そう考えていました。

親として、子どもの未来も不安だし、不登校の話はよく聞くから、自分の子がそうなってしまったら、先生からも心配されたり、迷惑かけたり、いろんな人にどんな目でみられるか…なんていうことまで考えてしまうのは、ごく普通のことです。

親と子どもの心理状態のギャップ

でも、考えてほしいのです。

子どもは「今、行きたくない」と言っています。明日のことは関係なく、見ているのは今。対して親が見ているのはずっと先の未来。親と子で、視点が違うのです。ですから、子どもと同じ視点で対応することが大切です。

「ずっと行かなくなる」ではなく、

「明日は行けるかも」
「親が学校まで送ったら行けるかも」
「午後からだったら行けるかも」

といろいろな可能性を考えてください。先のことは、誰にもわからないのですから。

また、親にとって子どもが学校に行き渋っているというのは、不登校の入口だと思いがちですが、子どもにとって、「学校に行きたくない」というのは、SOSの最終段階の場合もあります。

子どもだって「毎日、学校に行った方がいい」ということは百も承知だし、行きたくないと言ったら、親が困るだろうなということも分かっていて、それでも「行きたくなくて」と勇気をもって伝えた一言かもしれません。

そう思うと、親と子どもの心理状態というのは、大きなギャップがありますよね。

勇気をもって子どもが伝えてくれた言葉だという認識を、少しでも感じることが大切だと思います。

そして、一番大事なのは、家庭が子どもにとってどんなときでも、「安心して過ごせる場」であること。親と良い関係性を築いていくことだと思います。

「学校に行きたくない」息子への、私の対応

私には小学生の息子がいます。時折、学校に行かずに自宅で過ごすことがあります。そのときのやり取りです。

息子
息子
今日、学校行きたくないんだよね…

私
そっか、行きたくないんだね。じゃあ、今日はお休みしようか

息子
息子
うん、そうする

私
ママにできることはあるかなぁ? なんか話したいことあったら、言ってね

息子
息子
うん、大丈夫

私
そうそう、お休みのときの「お約束」覚えているよね

息子
息子
うん、覚えているよ!!やっとくから

 

「お約束」については後で書きますが、親である私は息子の気持ちを受け止めて、理解していることを伝えました。

ここで「なんで?」と詰問してしまうと、行かない選択をしている自分をダメだと感じることもありますので、親から責められた、怒られたと捉える子どもも少なくありません。ですので、休みたいと言ってきたら、

「休んでもいいよ」
「話したかったら、話せそうだったら教えてね」

という対応が、子どもの信頼へとつながります。

注意してほしいのは、「行きたくない」と言われて、休むことを認めても、「あ、そう。休んでいいよ」だけで済まさず、上記のような言葉がけは行ってください。

そうしないと、子どもは自分に関心がないと感じてしまいます。また、繊細なお子さんであればあるほど、

「お腹痛いの?」
「熱あるの?」
「お友だちとなんかあった?」
「先生がいやなの?」

などと質問攻めになると話せなくなることもあります。「親が聞いてきた理由以外のことでは休んではいけない」と勝手に感じてしまうこともあるかもしれません。

上記の息子とのやり取りでもそうですが、朝の段階で、その日休みたい理由を話すことはほとんどありません。子どもにとって「行きたくない」と言って、親からOKが出るかどうかは非常に緊張する場面ですから、本当のこと言わないこともあります。そのときは問い詰めず、その日の夜とか、お風呂に入っているときとか、子ども自身がリラックスしている時であれば本心を話してくれることが多いです。

お風呂に入ってリラックス(イラスト はぁもにぃ保育園・栗林実花)

お風呂に入ってリラックス(イラスト はぁもにぃ保育園・栗林実花)

学校に行かなかった日のわが家の「お約束」

さて、息子が学校に行かず自主的に休んだ日には、「お約束」があります。それは、

  • 家のお手伝いを1つする(水やり、トイレ掃除など)。
  • 冷蔵庫にあるものを使って、昼食は自分で用意する。「給食を食べないことを選んだのは、君だからね。お昼は自分で用意するんだよ」と伝えています。
  • 学校の授業時間は動画サイトやDVDなどは見ない。パソコンやタブレットは親が預かります。
  • 学校の授業時間は、自宅でも勉強時間。プリントをやったり、教科書を読んだりする。
     (なわとびや絵を描いたりしてもいいよと伝えています。)

わが家は職場から近いので、お昼に私が様子を見に行きます。職場が遠い人は、電話をするか、誰か信頼できる人に見に行ってもらうかしてほしいです。

わが家では、場合によっては在宅するときもありますが、毎回はできないので、自分がした選択に責任をとり、1人で自宅で過ごすということも小学生になってからはさせています。(未就学児は、1人でのお留守番はさせてはいけません)。

でも、1人でいる時には「インターフォンには出ない」「勝手に家の外に出ない」などのお約束が守れる年齢かどうかも、見極めポイントだと思います。

もちろん、上記のお約束は子ども自身、毎回すべてを守れるわけではありません。それでも、叱らずにできなかったことを事実として受け止めています。

こういう風にしていると、息子から「明日は行こうかな」と言って、翌日は登校することもありますし、2日くらい休んで、土日をはさんで次の週から登校することもあります。

元気に登校(イラスト はぁもにぃ保育園・栗林実花)

元気に登校(イラスト はぁもにぃ保育園・栗林実花)

あくまでわが家の一例ですが、参考としていただければ幸いです。

おわりに

子どもが登園・登校を嫌がるのは、発疹や発熱と同じ。自分の心と身体を、何か嫌なものから守ろうとしているのです。

そのサインを見逃さずに、寄り添ってください。登園・登校渋りは子どもにとっては最終手段かもしれないということを、意識していただくといいと思います。

だからといって、子どもが登園・登校を嫌がっても、親御さんは自分を責めないでほしいのです。生み育てている、それだけですばらしいことですから。

そして「1度行かなくなったら、2度と行かなくなる」と未来を考え過ぎないでください。子どもと一緒に「今」どうしようかを、考えてほしいです。

一番大事なことは、子どもにとって、家庭が「安心して過ごせる場」であること。親には、どんなことでも自分の気持ちを話せる関係でいられること。どんな自分も愛されていると感じられることです。

なにがなんでも学校に行かせようとするがあまり、親も子も疲れてしまったり、関係性が崩れてしまったりしては本末転倒です。

学校、保育園への行き渋りや不登校をきっかけに、お子さんをより知ることができるプロセスとして、是非お子さんに寄り添ってみることをチャレンジしてみてください。

子どもに寄り添って(イラスト はぁもにぃ保育園・栗林実花)

子どもに寄り添って(イラスト はぁもにぃ保育園・栗林実花)

そもそも、大人だって理由なく仕事を休める有給休暇が年間10日は最低あるわけですから、子どもたちにだって、そんな「理由なく学校を休む日があってもいいよね」と最近は思うようにしています。

そう思うと、保育園・幼稚園児も小中学生も本当によく頑張っていますよね。

はぁもにぃ保育園園長の山下真由美さん
【山下真由美】 板橋区認可保育園・はぁもにぃ保育園園長 / 保育コミュニケーション協会 認定ファシリテーション講師 保育士の為の新人教育、メンタルケア、チームビルディング研修など講師としても活躍中 (イラスト はぁもにぃ保育園・栗林実花)
<編集協力・松原夏穂>